今回は、NISA口座の相続について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、新しいNISAって世間で騒がれているけれど、NISA口座を持つ親が他界した場合、相続手続きはどうなるのかと心配している人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、NISA口座を持つ方が亡くなったときの相続手続き、相続までに値上がりしていた場合の所得税、相続財産となった金融資産にかかる相続税について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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NISA口座って何ですか?

岸田先生、私の父がNISA口座で投資信託を買ったそうです。
NISA口座って何ですか?





NISA口座とは、株式や投資信託で稼いだお金に税金がかからない非課税制度です。証券会社で特定口座以外に個人が開くことのできる証券口座の一つですね。2024年から始まる新しいNISAでは、NISA口座で購入できる金額の上限が1800万円に引き上げられただけでなく、NISA口座を永久に使い続けることが可能となりました。しかも、途中で売却したとしても、その翌年には投資枠の再利用が可能となりました。



資産運用して税金がかからないというのは大きなメリットですね。そもそも金融資産で運用したときに税金はどれくらいかかるのでしょうか。



一般口座や特定口座で株式や投資信託などで運用した場合、配当金・分配金、売却して得た売却益などの利益には、本来20%の税金がかかります。しかし、NISA口座で得られた利益は非課税となるのです。税金がかかりません。
NISA口座の相続手続き



それでは、もし私の父がNISA口座を残して亡くなった場合、相続人には、どのような手続きが必要になるのでしょうか。相続税も非課税になりますか?



NISA口座を持つ方が亡くなった場合、そのままにしていては、売却したり、配当金・分配金を受け取ったりすることはできません。相続手続きが必要です。また、相続税がかかります。



相続手続きは何をすればよいのでしょうか。





相続人は、被相続人の死亡を知った日以後に遅滞なく、証券会社へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出します。NISA口座の株式や投資信託を相続人の特定口座へ移管する場合は、「相続上場株式等移管依頼書」も併せて提出します。その際、被相続人のNISA口座と、相続人の特定口座は、必ず同一の証券会社になければいけません。
値上がりした場合所得税は?



相続人に相続税がかかるということですが、相続発生時までの値上がりした金額には、併せて所得税までかかるのでしょうか。





おっしゃる通り、高齢者が長期運用していると、株式や投資信託が値上がりして、NISA口座には含み益が発生している可能性があります。相続が発生した場合、相続発生時までに値上がりしたことで生じた含み益は、非課税となります。つまり、所得税はかかりません。



NISA口座で投資した商品の取得価額よりも、相続発生日の時価が大きい場合、その値上がり益については、税金がかからないということですね。そうすると、相続人の特定口座には相続発生日の時価で移すということでしょうか。



そうですね。よくわかりましたね。相続が発生すると、株式や投資信託が時価で売って解約されたとみなされるからです。



私も同じくNISA口座を持っていますが、父のNISA口座の商品を私のNISA口座へ移すことはできますか?





相続が発生した時点で、亡くなった方のNISA口座は終了します。そこから、相続人の証券口座に移す場合、一般口座または特定口座に移さなければいけません。NISA口座に移すことができないのです。たとえ相続人がNISA口座を開設していたとしても、相続によって取得した株式や投資信託はNISAの適用を受けられず、通常通り課税されることになります。
相続された金融資産かかる相続税



NISA口座の商品を相続人が引き継ぐときには、相続発生時の時価によるものとお聞きしましたが、相続税はその時価に対してかかってくるのでしょうか。





相続税には注意が必要です。所得税の取り扱いと異なるからです。所得税の話では、一般的な相続では、株式や投資信託の取得価額は、被相続人が取得した際の価額が引き継がれます。この点、NISA口座から受入れた株式や投資信託の取得価額は、相続発生日の時価が引き継がれます。これに対して、相続税の話では、株式や投資信託の相続税評価額は、相続開始日の終値、その月の終値の月間平均額、前月の終値の月平均額、前々月の終値の月平均額の4つの価格のなかから最も低い金額を選択することができます。つまり、相続税評価額は時価と異なるのです。
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