今回は、シニアの再婚と年金・相続について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、人生100年時代、一人で老後生活を過ごすのは寂しい、できれば再婚したいと考えている方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、シニアの方々が再婚する前に知っておくべき年金分割と相続争い、相続対策について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


シニア中高年の再婚は、年金分割と相続争いに注意!

岸田先生、私は今年で60歳になるのですが、5年前に夫が他界してしまい、その後は一人暮らしです。子どもはいません。老後を一人で暮らすのは寂しいので、再婚できればと思っています。





シニア層の再婚は増えています。ぜひお相手を探しましょう。厚労省によれば、結婚した夫婦の4組に1組は再婚です。このうち50代以上の比率は夫が約3割、妻が約2割だと言われています。



高齢になってから結婚を考えるときの注意点を教えてください。



結婚する前に、お相手の財産の状況を知っておきましょう。貯蓄や収入、借金、生命保険の加入状況、住まいは持ち家か賃貸かなどです。シニアになれば年金も重要です。国民年金と厚生年金の違いは大きいので、それなりの金額の年金収入を希望するのであれば、厚生年金に加入していた人を選んだほうがいいでしょう。



公的年金の金額を聞くにはどうすればよいでしょうか。





すでに公的年金を受け取っていれば、その金額を直接聞くしかないですね。受給開始前であっても「ねんきん定期便」を見せてもらえば、おおよその金額は分かります。注意したいのは、他界されたご主人の遺族厚生年金を受け取っている女性です。毎月5万から10万円を受給しているはずですが、再婚すれば受給できなくなります。60歳であれば、中高齢寡婦加算として毎月5万円も上乗せされていますが、それも受給できなくなります。



そうなると、相手の公的年金に頼ることになりそうですね。



そうですね、相手が離婚していれば、年金分割をしているかどうかも確認しておきましょう。年金分割は婚姻期間の厚生年金を離婚後に夫婦で分け合う制度です。夫が妻に渡すことが多く平均は月3万円ほどです。その分、離婚していた夫の年金の受給額は減ることになります。その一方で、年金分割を受けていた妻は、他の男性と再婚しても受け取ることができます。



それは事前に確認しておいたほうがいいですね。十分な公的年金がもらえなければ困ります。





女性が65歳になるまでに再婚すれば、夫の老齢厚生年金に加給年金が上乗せされることがあります。加給年金は、厚生年金に加入していた人に、65歳未満の配偶者がいれば、年間約40万円を加算する制度です。



健康保険はどうなるのでしょうか。私は国民健康保険に加入しています。



再婚相手の男性が会社勤めを続けていれば、夫の健康保険の被扶養者となって健康保険料がゼロになりますよ。



あとは介護が心配です。年上の男性と再婚すれば、普通に考えれば、私が相手を介護することになるかと思います。ただ、私は身体が弱いので、私のほうが先に要介護になるかもしれません。



持病があれば事前に相手に伝えておかなければいけません。介護については、介護が必要になったらどんな介護を望むか、事前に話し合って決めておく必要がありますね。介護費用は、在宅介護で毎月5万円、有料老人ホームなどの施設介護となれば、毎月15万円くらいかかるでしょう。



再婚相手の男性が先に他界しますと、相手の財産は、私がすべて相続することになるのでしょうか。





再婚相手の男性に前妻との子どもがいれば、妻と子どもが法定相続人となり、それぞれ2分の1ずつ財産を引き継ぐのが基本です。男性は、再婚せずに他界しますと、その相続財産はすべて子どもが引き継ぎますが、再婚してから他界しますと、その相続財産の半分は妻が引き継ぐことになるわけです。もし前妻の子どもがすべての財産を相続するつもりでいたのであれば、驚くべき状況となります。どの財産を誰にいくら継がせるか、再婚する前に決めておかないと、再婚した妻と、前妻の子どもがもめる可能性があります。それゆえ、再婚した後の相続を円滑に進めるには、遺言書を書いておくことが不可欠でしょうね。



不動産を相続する場合はどうなるのでしょうか。





例えば、再婚した夫が都心の一等地に住んでいて、相続財産の大部分が不動産であった場合、再婚した妻が自宅を相続するとすれば、遺産分割のバランスが悪くなって相続争いが起きる可能性があるでしょう。子どもに代償金を支払うことを求められるがあります。このような場合は、配偶者が無償で自宅に住み続けられる配偶者居住権を取得するものとして、夫が遺言を書いておいてもらえばよいでしょう。



相続争いせずに、私が多めに財産を受け取る方法はありませんか。



それならば、夫には生命保険に入っておいてもらえばよいでしょう。夫を契約者・被保険者、妻を受取人にした終身保険です。死亡保険金は遺産分割に関係なく、妻が確実に受け取ることができるお金となるからです。
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