今回は、相続登記を行わずに放置していたご一族の失敗事例について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、相続登記が2024年から義務化されると世間で騒がれているけれど、もしかして我が家にも関係あるのかと心配している人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、相続登記をせずに数世代にわたって放置していた事例について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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不動産共有の悲劇

岸田先生、いきなり相続問題が発生しました。相談に乗っていただけませんか?土地の相続なんです。



どうされましたか?相続って言っても、まだお父様はお元気ですよね?



先日、私の親族だと名乗る人から、突然電話があり、母の相続に関して署名と押印してほしいとおっしゃるんです。



確かお母様は子供の頃に他界されていましたよね?



そうです。私は兄と2人きょうだいで、母は私が0歳、兄が3歳のとき他界しています。その後、私たちは父親と3人で生活してきたんです。40歳となった今では、母の記憶はまったくありません。



それで、どのような手続きを必要とされているのですか?





親族とおっしゃる方は、私は一度もお会いしたことはないのですが、私のいとこらしいです。つまり、他界した母には兄弟がいたのですね。彼の話では、母の祖母名義の土地があって、それをいとこが相続するため、遺産分割協議書に署名と押印してほしいというのです。そして「司法書士から、書類が送られてくる」と聞いていて、先日それを受け取りました。まずは写真を見ていただけませんか。





これは狭いですね。家を建てるもの、駐車場にするのも厳しそうですから、隣地のオーナーに買ってもらうしかないでしょうね。



そうです、5坪しかありません。しかし、場所が港区六本木の駅前一等地のなんです。



それはすごい!?六本木というと、実勢価格では坪単価1,000万円ほどしますから、5坪であっても5,000万円くらいの価値があるかもしれませんね。



そうですよね。すべていとこに取得させるのはもったいないでしょう。
私も相続人であれば、売った代金を少しは分けてもらいたいと思ったんです。



それで、遺産分割協議ということはどういうことですか?



母の祖母名義の土地だということなのですが、相続登記が行われておらず、今回、その登記を行いたいということなんです。こちらの家系図を見てください。





これは立派な家系図ですね。これは戸籍謄本を集めるのがたいへんだったでしょう。お母様のお祖母様の名義になっているんですね。その子供が2人で、お母様はお孫様に該当することになります。お母様の世代は4人いらっしゃいますが、皆様すでに他界されています。その結果として、曾孫世代の8人が相続人だということですね。



相続人8人ですか!?全員が遺産分割協議書に署名と押印しなければいけないのですか?



そうですね。そうしなければ登記できませんから。



でも遠い親戚とは会ったことないですし、どこに住んでいるのか、生きているのか全くわかりませんよね。どうやって連絡するのですか?



それは戸籍の附票を見ればわかりますよ。



戸籍の附票とはなんでしょうか?



戸籍の附票とは、本籍地の市町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍に入ってから現在に至るまでの住所が記録されるものです。



なるほど。いとこは自分一人で土地を取得しようとしているようなのですが、私にも相続する権利はありますよね?



もちろん、法定相続人として権利を持っていますよ。しかし、会ったこともない相続人の皆様で話し合いしなければいけません。現実的な落とし所としては、土地を売却して、その代金を8人で均等に分けることでしょうね。



話し合いがまとまるといいのですが、難しいかもしれません。いとこは地上げ屋さんと取引の交渉しているらしく、自分一人で取得させてほしいと強く主張しているのです。実際に売却するまでに何年もかかるかもしれません。私はそんな厄介な取引にかかわりたくないのですが。





それでは相続分を有償でいとこに譲渡すればいいですよ。そうすれば遺産分割協議に参加する必要がなくなります。



相続分の譲渡とは何でしょうか?



相続人の地位と相続分を他人に譲渡することですね。有償でも無償でも構いません。これは譲受人と譲渡人の間の合意で成立するもので、他の相続人の同意を必要としません。今回のケースであれば、法定相続分は8分の1ですから、いとこにそれを譲渡すればいいのではないでしょうか。仮に土地を5千万円と評価するのであれば、その8分の1の625万円で買ってもらえばよいでしょうね。



わかりました。いとこに相談してみます。



相続登記していないと、孫や曾孫世代にツケが回ってくることになりますね。今後は、相続後3年以内に相続登記をすることが義務付けられましたので、このようなケースは減っていくでしょう。
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