今回は、年収1千万円を稼いでいたエリート会社員の老後生活が破綻した事例について解説します。60歳で退職金を2,000万円受け取っても、ゆとりある老後を送れることができないケースがあります。このチャンネルをご覧の方々の中にも、老後資金が不足してしまうのではないかと心配されている人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、老後生活が破綻してしまう原因として、高額所得者であっても公的年金が意外に少ないこと、節約する習慣が必要であること、介護費や医療費が予想外に高いことについて、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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エリート会社員の老後破綻事例

岸田先生、老後生活が厳しくなってきました。相談に乗ってください。



どうされましたか。





現役時代、私は年収1,000万円でした。退職金2,000万円を受け取り、手元の貯蓄も2,500万円くらいありましたので、老後についてまったく不安を感じていませんでした。老後2000万円問題はクリアできていると安心していたのです。私は、500万円を車の買い替えに使い、残り4,000万円を貯蓄していたのです。
ゆとりある老後生活を送れると思っていました。



そうですね。
公的年金も老齢厚生年金で十分なお金をもらえそうですね。



私の2人の子供は社会人となり独立していますので、夫婦2人と私の母との3人暮らしでした。85歳の母は認知症を疑う行動をとり始めていたので、心配していたのですが、残念ながら症状は少しずつ悪化していました。妻は専業主婦で、子供2人が独立したあとは、習い事などをして楽しく過ごしていました。32歳の長男は、来年には結婚をすることになっており、結納の予定も決まっています。長女は29歳で独身ですが、家から出て自立した生活を送っており、結婚を意識している恋人もいるようです。



円満なご家庭ですね。





60歳での退職後、認知症を発症した母親の心配もありましたが、今後は夫婦2人で旅行もしたいと考え、少し贅沢をして高級旅館を予約して温泉旅行に行くなど、思い描いたとおりの老後生活をスタートしました。また、以前から気になっていた老朽化や、母親の介護のために500万円かけて自宅のリフォームを行いました。その後、長男の結婚披露宴もありましたので、長男には結婚費用として150万円を出してやりました。その一方で、母親の容態も悪化したことで、昼間は認知症の人も受け入れ可能なデイケアに通院してもらうことにしました。



なるほど、リフォーム費用500万円をお使いになったので、貯蓄額が3,500万円になったというわけですね。



母の介護費用は、食事代を含めて毎月4万円もかからなかったので、毎月6万円の母の年金で足りていたのですが、デイケアに通いだしてからは、通院費や日用品などで毎月6万円がかかったので、私から毎月4万円を出すことになりました。



それは仕方がないですね。



現役時代には年収1,000万円あったことから、金額に糸目をつけずに欲しいものを買う習慣がしみ込んでいました。退職後もそんな生活を送っていたので、毎月30万円ずつ貯蓄を取り崩しながら、年金がもらえる65歳までの5年間を過ごすことになりました。



5年間で1,800万円ですね。





そして、私が65歳になったときには、貯蓄は1,700万円程度になっていました。妻と合わせて毎月20万円の年金をもらうことになりましたが、これまでの生活水準を一気に落とすことはできず、毎月不足分の10万円を毎月取り崩すことにしました。



だんだん苦しくなってきましたね。





私が67歳になったころには、夫婦2人とも病院にかかることが増え始め、母親は老人ホームに入所することになり、入所費用として私が500万円を支払うことになりました。貯蓄額が1,000万円を切ったところで不安になり、節約を心がけようとしましたが、若いころからの習慣を急に変えることはできません。70歳になったときには貯蓄額も底をつきました。



それは厳しいですね。



貯蓄がないので年金以外の収入はなくなりましたが、夫婦や母親の病院費や介護費として毎月10万円が必要なため、生活費として使えるお金は毎月10万円しかありません。



70歳を超えてしまうと、働きに出ることが難しくなります。こうなってしまうと、どうしようもありませんね。
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