今回は、子どものいない夫婦の相続問題について解説します。子のいない夫婦の相続は、故人の親族と配偶者のあいだで相続争いが起きやすいものです。このチャンネルをご覧の方々の中にも、お子様がおられない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、子どものいない夫婦で起こりやすい相続トラブルを回避するにはどうすればいいのか、実際の事例を使って、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


記事の内容を動画でチェック!
子どもがいない夫婦の相続は大問題


日本では、少子高齢化と晩婚化が進んでいます。生まれる子どもの数が少ないというだけでなく、晩婚の夫婦の中では、子どもを持とうとしない夫婦も増えています。特に、お互い再婚同士のケースであれば、当初より子どもを望まないケースのほうが多いことでしょう。
望む望まないは別にして、子どものいない夫婦生活を送るということは、幸せのかたちの1つです。
子育てに時間や労力、お金を使うことなく、夫婦共通の趣味を楽しむ時間は、人生に幸せをもたらすことでしょう。
ここで、子どものいない奥様には注意が必要です。幸せな夫婦生活が終わった後、ご主人のご兄弟との相続争いが待っているからです。65歳の未亡人の女性から相談された事例をご紹介しましょう。
相談事例





岸田先生、先日、主人が他界しました。75歳でした。主人とは、趣味のテニス教室で意気投合して、主人が50歳、私が40歳のときに結婚しました。私も40歳になっていましたので積極的に子どもを望まずにいて、結局子どもはできませんでしたが、その分、毎週のようにテニスやゴルフに一緒に出かけ、休暇のときには海外旅行を楽しんで、幸せな日々を過ごしてきました。



それは素晴らしい夫婦生活でしたね。



私たち夫婦には子どもがいなかったため、主人の財産を相続するのは私だけだと思っていました。預貯金3千万円と住む家を引き継いで、遺族厚生年金を受け取っていけば、一人残されても細々と暮らしていけると考えていました。



そうですね、お一人になっても遺族年金で毎月14万円くらいはもらえますからね。



今日、相続手続きを始めたのですが、不動産の相続登記をしようと思って、司法書士の先生に戸籍謄本を取得してもらったところ、「奥様以外にも相続人がいますよ」と言われたのです。私はなんのことを言われているのか、その時点ではさっぱりわかりませんでしたが、詳しく聞いてみると、主人には兄弟がいるとのことでした。





なるほど、ご主人のお父様には離婚歴があって、前妻さんとの間にも子どもがいた、つまり、一人っ子と思われていたご主人にはご兄弟がいたということですね。



そうなんです。まったく知りませんでした。



腹違いの異母兄弟であっても、法律上の法定相続人にあたるので、当然にご兄弟にも相続する権利がありますね。彼らを見つけ出して遺産分割協議を行わなければいけません。



でも、私はこの人たちと連絡を取ったことはなく、連絡先を知りません。連絡が取れたとしても、住んでいる家や銀行預金を持っていかれてしまうことになると困ります。このまま何もせずに放置したいのですが、よろしいでしょうか。



奥様にはご兄弟はいらっしゃいますか?



はい、私には弟が1人おります。





遺産分割協議を行わないとすれば、もし預金口座のお金をうまく引き出すことができたとしても、ご自宅の登記を奥様の名義に変更することはできません。不動産の登記を行わずにご主人の名義のままで放置しておけば、将来、奥様に万が一のことがあったら、奥様の法定相続人である弟様と、お会いされたことのないご主人の異母兄弟の方々が話し合いを行わなければいけません。それは酷な話ですよね。



それはそうですね。問題の先送りにすぎませんね。
遺言書は不可欠





今回は、ご主人が相続対策を行わなかったことが失敗の原因です。このような親族関係であれば、ご主人が遺言書を残すことが不可欠でしょう。「奥様に相続させる」と書いた遺言書が残されていれば、銀行預金と不動産の相続手続きを行うことことが可能となったのです。兄弟姉妹には遺留分はありません。遺言書があれば争う余地はなく、それで相続が完了してしまうのです。



そうなんですか!遺言書を書いてもらえばよかったです。







お子様がいらっしゃるとすれば、奥様とお子様が相続人となります。しかし、お子様がいらっしゃらない場合、相続人は兄弟姉妹やその子どもに広がっていきます。ここの兄弟姉妹に注意が必要で、ご両親に離婚歴や再婚歴があると、過去にさかのぼって異母兄弟まで広がるんです。



そうなんですか?兄弟姉妹がすでに他界していたとすれば、相続人は私だけになるのでしょうか?



いえ、兄弟姉妹には代襲相続が行われますから、甥っ子や姪っ子が相続人になります。そうなると、遺産分割の話し合いはもっと難しくなりますよ。



私と主人に離婚歴がなくとも、主人の親に離婚歴があると相続問題が発生するんですね。知らなかったです。遺言書を書いてもらっておけばよかったです。
コメント