今回も、NISAの失敗事例について解説します。前回の前編の動画では、信託報酬の高さを無視してファンドを選んだ失敗事例や、短期的なリターンの良さでファンドを選んだ失敗事例をご紹介しました。
そこで今回は、アクティブファンドを買ってしまう失敗例、債券ファンドを買ってしまう失敗例、eMAXIS SlimではなくeMAXIS を買ってしまう失敗例について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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アクティブファンドを買ってしまう失敗例

岸田先生、NISAで選べるファンドのうち、インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIX、S&P500といった指数に連動するように設計されたファンドである一方で、アクティブファンドは、指数を上回るか、指数に捉われずに高いリターンの獲得を目指すファンドですよね。アクティブファンドの長期的な運用成績がなぜ悪くなるのか、まだよく理解できないのですが、詳しく教えていただけませんか。





最初に、インデックスファンドとアクティブファンドの勝ち負けの実績を事実として理解しておこう。この表は、アメリカで公表されているインデックスファンドの勝率のデータなんだ。米国株式を見ると、運用期間1年の時点であってもインデックスファンドの勝率が65%、アクティブファンドの勝率が35%。その後の勝敗は明らかで、運用期間10年になると、インデックスファンドの勝率が87%、アクティブファンドの勝率が13%なんだ。実績として、アクティブファンドはボロ負けしているんだよ。



指数を上回る運用成績を目指したアクティブファンドが、現実には、インデックスファンドを下回る運用成績しか出せないというのは、なんだか悲しいですね。



ただし、アクティブファンドが絶対ダメと言っているわけではないんだ。アクティブファンドは、ギャンブルと同じような楽しみを味わうことができるから、それはそれで面白いんだよ。私も原油先物ファンドで遊んだことがあるよ。



アクティブファンドを買わないとしても、インデックスファンドを売ったり買ったりするのはどうでしょうか。上がりそうなときに買って、下がりそうなときに売れば、常に利益だけ得られて、損失を防ぐことができますよね。



それはアクティブファンドと同じ考え方だよ。自分でアクティブに投資しても同じだ。上がる前に買う、下がる前に売ることができれば必ず利益を獲得できるけど、それを実際にやるのは至難の業だよ。





S&P500の毎年のリターンの推移を示したこのグラフでもわかるように、ほとんどがプラスだとしても、リーマンショックのときのようにマイナス40%になる年もあるんだ。これを見て、「投資は怖い、やめておこう」って思う方もいるかもしれないけれど、こういった短期的なマイナスというリスクを我慢する代わりに、長期的なリターンが得られるということを理解する必要があるんだ。これはとても大切なことだよ。
債券ファンドを買ってしまう失敗例



あと、価格の変動幅を抑えるために、資産の一部を債券ファンドに投資するのはどうでしょうか。





それはよくある失敗例の一つだね。国債などの債券は、高齢者など価格変動を抑えるべき人にとって必ず対象とすべきものだけど、せっかくNISAの貴重な非課税枠を使うなら、値上がりが期待できる株式ファンドだけにするほうがいいね。債券に投資するならば、特定口座で運用するのがいいよ。あと、信託報酬を取られる債券ファンドを買う意味は無く、信託報酬ゼロの国債を買っておけばそれで十分だね。米国債であれば十分にリターンも高いよ。



バランスファンドといった商品はどうですか?例えば、eMAXIS バランスファンドだと、株式と債券にいい感じに配分されているように見えます。eMAXIS Slim S&P500まで含まれているような気がします。



バランス型であっても、債券に投資するファンドを買う必要性はまったくないね。例えば、eMAXIS バランスファンドだと、信託報酬率0.55%だけでなく、換金するときの留保額として0.15%の手数料が取られてしまうので、長期的なリターンは明らかに悪くなるだろうね。しかも、eMAXISという商品は、eMAXIS Slimとは全然違うので勘違いしてはいけない。



えっ!?同じeMAXISでも違うというのはどういうことですか?
eMAXISを買ってしまう失敗例



eMAXISシリーズとは、三菱UFJ国際投信が販売しているファンドだけれど、店頭販売するeMAXISシリーズと、インターネット販売するeMAXIS Slimは分けていて、信託報酬に大きな差をつけているんだ。いま一番人気があるのは「スリム」が付いているほうだね。例えば、同じ全世界株式のインデックスであっても、eMAXISSlimの信託報酬は、0.11%だけど、eMAXISシリーズの信託報酬だと0.66%になっているんだ。その差は6倍もあるんだね。



信託報酬がそんなに違ってくるんですね!でも、同じインデックスファンドであれば、信託報酬の安いeMAXISSlimを買えば済むのに、どうしてeMAXISシリーズを買ってしまう人がいるんですか?





これもよくある間違いの代表例なんだけれど、銀行員に紹介されたグループ証券会社でNISAを初めてしまうからなんだ。対面で営業担当者と話をする銀行系証券会社の場合、NISA口座を開いたとしても、信託報酬の安いeMAXISSlimは取り扱われておらず、信託報酬の高いeMAXISシリーズを買うしかないんだよ。これは、対面販売の人件費がかかってくるので仕方ないことだね。ちなみに、三菱UFJ国際投信のグループ会社である、三菱UFJモルガンスタンレー証券でNISA口座を開いても、eMAXISSlimを買うことができないから注意が必要だね。
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