今回は、定年退職後の60代の生き方について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、そろそろ定年退職が近づいてきたけれど、退職後の生活は大丈夫なのと心配している人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、60代の厳しい老後資金の現実、絶対にやってはいけない60代の生き方、おすすめする理想の60代の生き方、知っておきたい211万円の壁について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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60代の厳しい老後資金の現実

岸田先生、老後の一番の不安は、お金が無くなることだと思っています。60代から老後資金の問題が発生してくると聞いたのですが、どのような問題でしょうか。



定年退職することによって給料がもらえなくなること、年金の受給を開始できる65歳まで年金がもらえないことが問題となるね。



定年退職しても65歳までは働き続けるべきでしょうか。



その通りだ。現在、60代前半の約7割、60代後半の約半分の方が、働き続けることを選択しているんだよ。大企業では、60歳で定年退職となっても、それ以降は再雇用という形で会社に残り、5年間、継続して働くことができる会社が多いようだ。ただし、再雇用された後の給与は減らされるけれどね。



どれくらい給与が減らされるのでしょうか。





再雇用後の給与が、それまでの半分以下になる会社がほとんどだね。



それならば、年金収入を頼りにするしかないでしょうか。



年金収入についても今後は不安があるよ。社会保険制度が改正され、保険料を納める年齢や、年金を受給できる年齢が、後ろ倒しになる可能性が高いと言われているんだ。現在の制度では、国民年金の保険料の支払いは20歳から60歳の40年間だ。しかし、今後、65歳まで延長される可能性がある。仮に65歳まで延長されるとすれば、国民年金の保険料は毎年約20万円で、それを5年分追加支払いするから、一生涯で100万円もの大きな負担増加となるんだよ。



えーっ、そんなに増えるんですか?



日本人の平均寿命は年々伸びていて、一人当たり一生涯受け取る年金額は年々増えてきているよね。年金の受給開始年齢は、いずれ70歳に引き上げる可能性が高いと考えるべきだね



老後生活は厳しいですね!
絶対にやってはいけない60代の生き方





絶対にやってはいけない60代の生き方を言うと、それは働くのをやめてしまい、年金の繰上げ受給と貯蓄の切り崩しによって、生活することだ。近年は70代になっても働き続ける人が増えてきてはいるものの、老化の影響もあり、体力的な問題から働きにくくなるのが現実だ。まだまだ元気な60代のうちに老後資金を取り崩してしまうと、老後資金が枯渇してしまい、取り返しのつかない状況となってしまうよ。



年金の繰上げ受給を行わないほうがいいというのはなぜでしょうか。



60歳で繰上げ受給を開始したとすると、1ヶ月あたり0.4%減額されるから、60ヶ月で24%も減額されてしまう。もらえる年金が一生涯にわたって4分の3の水準まで減らされてしまうということなんだ。



それでは老後生活が苦しくなりますね。



他にもデメリットがあるんだ。老齢年金の繰上げ受給を行おうとする場合、障害年金と寡婦年金への悪影響があるんだよ。



障害年金、寡婦年金とは何でしょうか?



障害年金は、20歳から64歳までの間に障害状態になるともらえる年金だね。障害等級が2級以上であれば、老齢年金よりも年金を多くもらうことができるね。一方の寡婦年金というのは、夫が国民年金を受け取る前に亡くなった場合に、その妻が60歳から65歳になるまでの間にもらえる年金だ。夫が国民年金保険料を支払っていた期間分に相当する年金額の4分の3の金額をもらえるんだ。



それは助かりますね。





しかし、いったん老齢年金を繰り上げ受給すると、その後に障害状態になっても、障害年金も寡婦年金ももらえなくなってしまうんだ。



それならば、繰上げ受給しないほうがいいですね。
おすすめする理想の60代の生き方





私がおすすめする理想の60代の生き方は、可能な限り長い期間を会社員として働き、その給与収入で老後生活を送ることだね。働くこと自体が健康を保つ上での要素にもなるし、活動的な生活は認知症予防にもつながるね。それに加え、国民健康保険ではなく、協会けんぽなどの健康保険への加入を続けることによって、傷病手当金がもらえることがメリットだね。



傷病手当金って何ですか?



傷病手当金とは、病気やケガで連続3日以上働けないとき、連続3日の休業期間があれば、4日目からもらえるお金のことだね。報酬の3分の2が支給されるんだ。たとえば、月給30万円の人であれば、日給1万円と換算して、その3分の2、つまり1日あたり6667円もらえることになる。



それは助かりますね。



これに加えて、70歳までは厚生年金の保険料を支払い続けることができるんだ。厚生年金は70歳までが加入対象となっていて、60歳を過ぎて加入期間が増えることで、将来受け取る年金額を増やすことができるんだよ。



65歳以上で厚生年金に加入して働きながら、その一方で老齢厚生年金の受給を開始される方はどうなるんですか?





それは重要なポイントだね。在職老齢年金制度によって、受け取る年金額がカットされる可能性があるので注意が必要なんだ。つまり、働きながら同時に年金を受け取ると、一部の年金が減額される可能性があるということだね。
知ってておきたい211万円の壁



211万円の壁って何ですか?





いい質問だね。211万円の壁とは、大都市で年金生活を送る夫婦が、住民税非課税となる基準の収入額が211万円になっていることだ。



住民税が非課税になるのは助かりますが、それ以外にメリットがあるんですか?



国民健康保険や介護保険などの社会保険料が安くなること、医療費が高額になったときの高額療養費で返金額が高くなること、自治体によっては公共交通機関や公共施設で無料になったり割引が受けられたりすること、市区町村の支援金の対象となりやすいことがあるね。



それは便利ですね。211万円を超えないようにするために、年収を下げるべきでしょうか?



いや、それは良くないね。むしろ211万円を上回る収入を稼ぐ努力をするべきだよ。なぜなら、年金の繰上げ受給などを行って年収を下げてしまうと、結果的に老後の年金収入を下げてしまい、老後の生活水準を下げざるを得なくなるからだよ。



わかりました。ありがとうございました。
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