今回は、タワーマンションの新しい相続税評価について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、タワマン節税が使えなくなった、不動産を活用した相続税対策ができなくなるのではと心配している人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、相続税評価額の計算式、乖離率、計算例について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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相続税率評価の計算式


岸田先生、私の理解では、相続税法で規定されている相続財産の評価では、建物は固定資産税評価額、土地は路線価を使って評価することとなっています。タワーマンションの相続税評価の方法が変わると聞きましたが、どのように変わるのでしょうか?



新しい計算式の最大のポイントは、実勢価格を反映する指標の導入なんだ。これは、まず築年数や階数などに基づいて評価額と実勢価格の乖離の割合、乖離率を計算すること、その結果として、乖離率が1.67倍以上であった場合、従来の計算による相続税評価額に、乖離率と0.6を掛けることなんだ。





つまり、タワーマンションの乖離率が一戸建ての平均的な乖離率である1.66倍にそろえることになるんだ。逆に言えば、乖離率が1.67倍未満であれば、従来の計算による相続税評価額を使うということだね。この結果として、タワーマンションの相続税評価が、一戸建ての相続税評価額とだいたい同じ水準になるんだよ。
【計算の手順】
(1)乖離率の計算
(2)乖離率に応じた相続税評価額の計算(2種類)
・乖離率1.67倍以上であった場合:従来の計算による相続税評価額に乖離率と0.6を掛けた価額で評価 ・乖離率1.67倍未満であった場合:従来の計算による価額で評価



乖離率とは何でしょうか?



乖離率というのは、従来の計算による相続税評価額の実勢価格に対する倍率のことだ。計算式を書くと、実勢価格割る相続税評価額という分数になるね。
乖離率 = 実勢価格 / 従来の計算による相続税評価額



実勢価格と相続税評価額の乖離の大きさを表すものなんですね。





そうだね。例えば、東京都内の築9年の43階建て高層マンションの23階で、1億1900万円の実勢価格に対して相続税評価額が3720万円となっていたとしようか。計算式に当てはめると、1億1900万円割る3720万円で、3.2倍ということになるね。



乖離の大きさを表す指標としては、評価水準があったと思います。
例えば、土地の路線価は実勢価格の80%、固定資産税評価額は実勢価格の70%などといった表現です。評価水準は、実勢価格に対する相続税評価額の割合でしたから、この乖離率の計算式は、評価水準の分子と分母を入れ替えたものに見えます。



そうだね。実勢価格1億1900万円を100%とすれば、相続税評価額3720万円は、評価水準31%だと言えるよね。乖離率は評価水準の逆数になっているんだよ。これまでタワマン節税の提案していた不動産業者の業界用語によれば、この評価水準は「圧縮率」と呼ばれていたね。



乖離率という表現に馴染みがないので、ちょっと違和感がありますね。



乖離率が計算できると次に、それが1.67倍以上かどうかの判定が行われ、相続税評価額の計算式が2通りに分かれるんだ。



1.67倍というのは何を意味しているのでしょうか。



乖離率1.67倍というのは、評価水準で言えば、1.67倍の逆数である60%ということだね。すなわち、相続税評価額が実勢価格の60%で評価されているかどうか判定しているということなんだ。つまり、乖離率1.67倍以上になるかどうかの判定は、その逆数である評価水準60%を下回っているかどうかの判定ということだね。評価水準60%を下回るというのは評価が低すぎると考えられるから、60%が下限に設定されたんだよ。



なるほど、60%が下限とされているんですね。それでも路線価の80%よりも低くなっていますね。





乖離率3.2倍と計算されたケースでは、1.67倍以上だと判定されるから、相続税評価額を修正する計算が行われるんだ。すなわち、従来の計算による相続税評価額に対して乖離率と0.6を乗じることになるんだ。従来の計算による相続税評価額3720万円に、乖離率3.2倍と0.6を掛けた7140万円が新しい相続税評価額ということだね。従来は3720万円だったけれど、それが新しい計算式によれば7140万円になるから、相続財産は約2倍に膨らむということになるね。
乖離率の計算式



乖離率の計算はどのように行われるのでしょうか。



国税庁によれば、居住用のタワーンマンションの乖離率は、難しい計算式に当てはめて計算するものとしているんだ。





その計算式は、築年数掛けるマイナス0.033、総階数指数掛ける0.239、所在階掛ける0.018、敷地持分狭小度掛けるマイナス1.195の総合計額に3.22を加算したものになる。総階数指数というのは、マンションの総階数を33で割ったもので、1.0が上限とされている。また、敷地持分狭小度は、マンション全体の敷地面積に、持分割合を掛けて「敷地利用権の面積」を算出し、これを建物の「専有面積」で割ったものなんだ。



それは難しいですね!どうして乖離率の計算が必要となるのでしょうか。不動産業者に聞けば実勢価格を教えてくれますよね。



それは、不動産業者に聞いても実勢価格はわからないからなんだよ。実勢価格というのは、実際に取引が成立したときの価格なんだけれど、相続財産となったタワーマンションは、売買の対象となったわけではないから、実勢価格がわからないよね。だから、法令で決められた計算式を使って実勢価格を推測させることにしているんだね。つまり、「このタワーマンションを売ったとすれば、いくらぐらいで売却できるか、」推測しようとしているんだね。



なるほど、理解できました。実勢価格が高く計算されるのは、どのようなケースでしょうか。



この計算式によれば、築年数が浅いとき、マンション全体が高層であるとき、所有階が高層であるとき、敷地持分狭小度が小さいときに離率が大きくなるんだ。つまり、総戸数の多い超高層マンションであれば、乖離率は1.67以上になる、つまり、相続税評価額を大きく上回る高い価格で売却できると考えられるね。
乖離率の計算例



具体的に乖離率はどのように計算するのでしょうか。





ここで、築年数3年、総階数29階、所在階10階、持分狭小度0.147であり、従来の相続税評価額が2600万円であったマンションの新しい相続税評価額を計算してみようか。まずは乖離率すると、3.336倍になるね。



相続税評価額の3.336倍で売却できる可能性があるということですね。





次に、乖離率に応じた相続税評価額の計算だ。
乖離率3.336は1.67以上と判定されるから、これまでの相続税評価額かける乖離率かける0.6の計算式が適用されんだよ。2600万円かける3.336かける0.6で、5200万円だね。



これまでの相続税評価額が2倍になるんですね、その分、相続税の負担が重くなりますね。わかりました。ありがとうございました。
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