今回は、退職金の受け取り方と運用方法について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、退職金をまとめて資産運用することを銀行や証券会社から勧誘されたけど、本当に大丈夫なのかと心配している人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、退職金の受け取り方、退職金の運用方法、退職金専用の金利上乗せプランについて、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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退職金の受け取り方

お世話になった私の上司が今月で定年退職なんです。今日会社で会ったときに、退職金に税金がいくらかかるのかわからなくて心配だとおっしゃっていました。



そういう人は多いみたいだね。しかし、老後を支える大事なお金だから、現役の時から知っておいた方がいいよね。



会社員は、定年まで務めると、どのくらい退職金をもらえるのでしょうか?



厚生労働省によれば、2003年に平均2500万円だった退職金は、2018年に平均1800万円まで減少しているよ。金利低下や高齢化などが原因だと言われているね。





その上司は、受け取り方に悩んでいるとおっしゃっていました。一括で受け取る一時金か、何年かに分割して受け取る年金形式という選択肢があるそうです。どちらがよいのでしょうか?



税金を差し引く前の金額で比べると、全額を年金で受け取る方法が、大きくなるね。受け取るまでの間に運用して増やしてくれるから。しかし、税金や社会保険料を差し引いた手取り額を比べると、一時金で受け取る方法が、大きくなるんだ。



税金や社会保険料が軽いからですか?



そうなんだ、一時金でもらうとすれば、「退職所得」という扱いになって、退職所得控除という大きな非課税枠を使えるからなんだ。これに加えて、非課税枠を超えた分でも、課税されるのは2分の1の金額だけとなって、しかも、給与所得などほかの所得と分離して計算されるから、税率を低く抑えられるんだ。



それはいいですね!退職金の非課税枠はどのくらいですか?





勤続年数20年までは1年ごとに40万円、20年を超えると1年毎に70万円ずつ加算してくことになるんだ。例えば、60歳まで38年間勤務したとすれば、約2000万円が非課税となるね。



年金形式でもらう場合はどうなるのでしょうか?



年金形式でもらうとすれば、「雑所得」という取り扱いとなるんだ。雑所得であっても、公的年金等控除という非課税枠が使えるけれど、これは小さいんだよね。



年金の非課税枠はどのくらいですか?





60歳前半までは、公的年金などと合算した収入額が130万円未満ならば年60万円、60歳後半になると、収入額330万円未満ならば年110万円の非課税枠なんだ。退職所得の非課税枠と比べると小さいね。



社会保険料も違うのですか?



年金形式でもらうと収入額が増えるから、国民健康保険料も増えてしまうね。



それならば、税金も社会保険料も安くなる一時金でもらうほうがよさそうですね。
退職金の運用方法



一時金で退職金を全部もらったとして、そのお金はどうすればよいのでしょうか。金融資産で運用したほうがいいですか?



退職金のようなまとまったお金を受け取る機会は人生でそんなにないから、実際、大きな資金で投資しようと考える人が多いようだね。



高齢者はどのように資産運用すればよいのでしょうか?



株式や投資信託などで資産運用を行うと、損失が発生する可能性があることは知っているよね。リスクのある金融商品だから。高齢者は、若い人と違って長期運用することができないから、短期的に損失が発生しても、それを挽回することが難しいんだ。だから、老後資金に必要なお金は、銀行預金や国債で安全な運用しておくべきだね。



老後資金に必要なお金は、具体的にいくらなのでしょうか。



収入から支出を差し引いて計算することが基本だね。自分の年金収入を確認したうえで、今後の生活費、医療費、自宅の維持費、交際費、娯楽費などの家計支出を予測し、それらを差し引いてやれば、老後に不足する金額がわかるよね。その不足額は、手元にある金融資産を取崩して補うしかない。だから、その不足額だけは、銀行預金や国債として持っておくほうがいいね。
退職金専用の金利上乗せプラン



そういえば、退職する上司が、退職金を預け入れると金利を5%にしてくれる「特別プラン」の定期預金を銀行窓口で勧められたと喜んでいました。



それは、投資信託の購入がセットになったボッタクリ商品だね。そこでセット販売される投資信託は、購入手数料が3%かかったり、信託報酬が2%などと高く設定されたりしているんだよ。金利が高いように見えてもこれはまやかしで、預入期間は3カ月に短縮されているから、実際の利息収入は、年率表示の12分の3だけしかもらえないんだよ。多少の利息の上乗せがあっても、投資信託の手数料で飛んでいってしまうね。



えーっ!そんなひどい商品が売られているんですか?



大きな資産を持つ高齢者は、金融機関にとって「いいかも」なんだよ。お客様の預金口座に多額の退職金が入金されたことを見つけた営業担当者は、そのお客様にすぐに電話して、ボッタクリ商品を勧誘するんだよ。



銀行の勧誘には注意しなければいけませんね!
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