今回は、証券会社の営業担当者の利益相反について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、貯蓄から投資へとか、資産所得倍増って世間で騒がれているけれど、証券会社の営業担当者に丸投げしてよいのだと考えている人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、資産運用すべき理由、証券会社の手数料引下げ競争、営業担当者の利益相反について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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資産運用すべき理由


岸田先生、最近、日本政府が「貯蓄から投資へ」とか「資産所得倍増プラン」とか、NISAに投資して資産運用することを強く勧めていますよね。証券会社もNISA口座の開設を勧めてきます。どうして投資や資産運用のことが騒がれているのでしょうか。



その理由は、日銀が低金利政策を続けていることかな。
証券会社の手数料引き下げ競争





低金利で何が問題なんですか?銀行が苦しいということはわかりますが、金融商品を販売する証券会社には関係ないですよね?



いや、メガバンクが証券ビジネスに力を入れてきているので、証券会社同士の競争が激しくなったんだよ。特に手数料の引下げ競争が進んでいるんだ。この点、株式売買の手数料については、米国の大手証券会社がゼロまで下げているので、これを真似して日本でも手数料「ゼロ」にしようとする動きがあるんだよ。



手数料ゼロでどうやって利益を出すのですか?



一時預かり金の利息だよ。一般投資家が証券口座にお金を入れても、その全額を金融商品に投資しているわけではないよね。売却したときは必ず現金になるから、一部は必ず現金で持つことになる。米国の大手証券会社では、預り金だけで何兆円っていう金額になるから、そこから得られる利息だけでも何百億円という収益になるんだよ。



なるほど、証券会社が利息で稼いでいるって面白いですね。そういえば、日本のネット証券でも、手数料は下がってきていますよね。



そうだね。投資信託でも、販売手数料ゼロが広がってきているし、信託報酬も引き下げ競争が発生しているよ。



なるほど。ネット証券では、商品選びや売買の操作を誰も手伝ってくれませんから、その分手数料が安くなるんでしょうね。でも、対面の証券会社だと、大勢の営業担当者がいて、私たちに丁寧に対応してくれますよね。



その通りだね。対面の証券会社だと、金融担当者が多すぎるんだよ。しかし、彼らには高い人件費がかかるから問題となるんだ。金利で稼げないし、取引から得られる手数料も下がるなら、証券会社の営業担当者は、お客様に「アドバイス」を提供して収益を得るしかないんだ。



お客様にアドバイスを提供することで収益を得ることができるのですか?



その通りだよ。米国の大手証券会社は、売買手数料ゼロを達成した後、ビジネスモデルを転換して、アドバイス料や、巨額の一時預り金の利息から収益を得るようになったんだ。



お客様へのアドバイスとは、具体的にどのようなものでしょうか?



株式や債券、投資信託などの金融商品に関する情報や市況分析を提供して、お客様に最適な投資先や投資戦略、投資リスクの説明、ポートフォリオのアドバイス、税金に関するアドバイスを行うことだね。ただし、資産運用のアドバイスと商品販売から手数料を取ることとの間には深刻な利益相反があるんだよ。
営業担当の利益相反





利益相反って何ですか?



営業担当者は自社の商品を売って手数料を稼ぐことを職務として働いているからね。彼らには業績ボーナスがあるから、高い手数料の商品を売っていかないと、生活が苦しくなるんだ。ノルマも厳しいんだよ。手数料が下がるってことは、お客様にとってはいいことだけど、営業担当者にとっては最悪の事態なんだよ。だから、手数料のことなんて気にしない高齢者をターゲットとして商品を売ろうとするんだよね。



それは難しい問題ですね。でも、私たち一般投資家は、誰にアドバイスを求めればよいのでしょうか?



そうだね。投資や資産運用は、営業担当者に頼らずに自分で行うことが基本だよ。ただし、自己流で行うとリスクが高くなる場合があるから、専門家のアドバイスを受けることで、安全に投資を進めることができるようになる。何をしてよいか全くわからない段階ならば、独立系のファイナンシャル・プランナーに相談してみるといいだろうね。



でも、ある程度は投資の経験を積んだ後、専門家による本格的なアドバイスを受けたい場合はどうすればいいですか?



その場合は、資産運用だけではなく税務に関するアドバイスを同時にやってくれる専門家に相談するべきだね。資産運用のことをアセットマネジメント、税務対策のことをタックスマネジメントというんだけれど、米国では、アセットマネジメントとタックスマネジメントを統合する考え方が普及しているんだ。資産運用と税務の両方をアドバイスできる専門家といえば公認会計士になるだろうね。



なるほど、ありがとうございます。
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