金融庁によれば、仕組債を購入した顧客が3カ月で元本の8割を毀損するなど、トラブルが予想される例が発生しています。
今回は、仕組債について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、仕組債のトラブル多発とか販売停止って世間で騒がれているけれど、誰が仕組債など買っているのかと気になっている方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、仕組債の何が悪いのか、仕組債の利益と損失、仕組債の早期償還、仕組債の手数料について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。


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仕組債の何が悪いのか


岸田先生、最近、新聞や雑誌で、地方銀行や金融商品仲介業者が、ハイリスクの仕組債を売りまくって問題となっているという記事を読みました。仕組債ってなんですか?



仕組債というのは、株価や金利を対象としたオプション取引やスワップ取引など、複雑なデリバティブを組み込んで、国債や社債よりも高い利回りを設定した債券だ。「普通よりも高い金利が得られますよ」と言ってたくさん売られていたんだ。証券・金融商品あっせん相談センターの事例のうち、仕組債は38%でトップらしいよ。



オプション???スワップ???デリバティブですか???おっしゃっている意味がよくわかりません。ただ、何となく怖そうな感じがしますね。



わからなくてもいいよ。イメージだけ教えるとすれば、株価や金利が動いた、その金額の何十倍や何百倍という大きな金額が動く金融商品だね。他社株転換社債や日経225リンク債といった商品が有名だね。





これは、もともとはプロの機関投資家に開発された商品なんだけど、最近では個人向けにも販売されているんだ。
問題なのは、70~80代の高齢者や、高額な退職金を受け取って初めて資産運用を始めようとする60代の人たちに販売されていたことなんだよ。
仕組債の利益と損失



債券は、株式とは別で、価格変動が小さな金融商品ですよね。それなのに、株価を対象とするデリバティブが組み込まれているというのは、どういう意味でしょうか?債券と株式を一体化できるのですか?





仕組債に株価指数が組み込まれている場合、それを購入した投資家は、株価指数に連動して損失を引き受ける代わりに、高い金利を受け取ることができるんだよ。このゼロ金利の時代でも8%とか10%という高い金利で売られているけれど、株価指数が大きく下落した場合は、その損失を引き受けることになるよ。



株価指数が大きく上がっても、仕組債は値上がりしないのですか?



そうだ、値上がりしないよ。
その一方で、損失は無限大という、割の合わない条件なんだ。



損失のリスクだけ引き受けるなんて怖いですね!



それでも仕組債は人気なんだよ。仕組債は債券に分類されるため安心感があって、安全なものと誤解されるケースが多いんだ。一見すると、ビックリするくらい高い金利を付けられていて魅力的に見えるからね。株価指数が下落したときの損失のことを十分に説明されておらず、イメージできていないのだろうね。





それでも、損失の危険性を理解したうえで、ハイリスク・ハイリターンの金融商品だと割り切って投資するのであれば、問題ないのでしょうか?



投資家にとって重要なことは、損失のリスクに見合うリターンを得られているかなんだけど、仕組債は、リスクに見合ったリターンを得られていないんだよ。こんなものを買うくらいならば、値下がりと値上がりの両方がある個別株式や投資信託に投資したほうがいいよ。
仕組債の早期償還





それでも債券に組み込まれている株価指数が下がらなければ、ずーっと高い利息をもらい続けることができますから、そのときはラッキーですよね?



いや、そこに落とし穴があるんだよ。「早期償還条項」というものが付いていて、3ヶ月毎にくる判定日の株価指数が一定の価格を超えたときには、仕組債の元本が強制的に償還されてしまうんだ。
つまり、高い利息をもらえる期間は長く続かないんだよ。



元本は割れないですよね?何が問題なのでしょうか?



仕組債の投資家は、早期償還でお金が戻されてくるから、新たな投資対象を見つけなければいけないよね。そこで、地方銀行や証券仲介業の営業担当者から、新たな株価水準で発行される仕組債を提案され、またもや仕組債に投資してしまうんだ。株価指数が上昇を続ける時期に、早期償還と購入が繰り返されていると、株価指数が下落するときが来て、大きく元本が目減りするんだ。
結果として、それまで受け取った利息は、一気に吹き飛んでしまうんだね。
仕組債の手数料





投資家が損するように巧妙に仕組まれているんですね。



そうなんだよ。しかも、仕組債の手数料は、ものすごく高いんだ。実質的に年率5%から7%くらいだと言われているね。でも、問題なのは、それが見えないことなんだ。債券の売出価格は、証券会社が仕入れた価格に販売手数料を上乗せして決定されるし、利息の受取りでも手数料を抜かれている。売出価格や表面利率しか見ていない投資家は、手数料がいくらなのかわからないんだよ。



見えないところで、たくさん手数料を取られているんですね!?



さらに早期償還されて再投資すれば、またそこでも手数料が取られてしまう。金融庁によれば、実質手数料が20%を超えるものもあると言われているよ。実質手数料が20%とすれば、仕組債を買った瞬間に20%の損失が確定ということだね。悪名高きファンドラップよりも高いんだ。





この点、金融庁は、「中長期的な資産形成を目指す一般的な顧客ニーズに即した商品としてはふさわしいものとは考えにくい」、「金融機関側の説明が不十分」だと指摘しているよ。



ひどい商品ですね。間違って仕組債を買ってしまわないように注意しなければいけませんね。
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