亡くなった方が一人暮らしだったとき、空き家を相続することになり、相続直後に売却を検討することになります。その場合、境界確定と測量が必要になることがあります。今回は、境界確定や測量はなぜ必要になるか?境界確定や測量の進め方について、説明いたします。
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境界確定や測量の進め方

岸田先生、先日、私の母親が他界しました。私が土地を相続したんですが、その土地の面積がわからないんです。どうしたらいいですか?



まず、土地の登記簿を確認しなければいけないね。最近購入された土地であれば、面積は正確に登記されているはずだ。しかし、築年数が古い建物の敷地や、先祖代々相続されてきた土地の場合、境界が確定されておらず、土地の面積が不正確な場合があるよ。



なぜ登記簿の面積が不正確なのですか?





古い土地、特に昔から家族で受け継がれてきた土地は、境界がはっきりしていないことがあるんだ。境界が不明確だと、売買の際に問題が起こることがあるよ。買い手も、どれくらいの大きさの土地を買えるのか分からなくなってしまうね。



それは困りますね!



それに、都市部での固定資産税や都市計画税は土地の面積によって決まるから、間違った面積だと税金も間違ってることになるんだ。だから、正確な面積を知ることが大切だよ。



じゃあ、どうすればよいのでしょうか。



まず、境界をはっきりさせて、正しい面積を測るために測量をする必要があるよ。これで安心して土地を売ることができるね。
境界確定測量の依頼先と費用は



今回の相続では、どうすればよいのでしょうか?





まずは現地で境界標があるか確認してみよう。境界標がなければ、土地の境界確定の測量が必要かもしれないね。税理士に相談してみるのが最初の一歩だろうな。



測量するのであれば、どうすればいいんですか?



測量士や土地家屋調査士に依頼することになるけれど、相続の場合は相続税申告や譲渡所得税申告に影響があるから、税理士とも連携して進める必要があるね。



境界確定の測量ってどうやって進めるんですか?



ますは仮測量を行い、測量者と土地所有者が集まって境界確定の話し合いをするんだ。境界が確定すれば、確定測量が行われ、正確な面積が分かる。その後、境界標を設置することになるね。その後、確定測量から登記完了までには3か月くらいかな。



測量にかかる費用はどれくらいですか?





一般的に、100㎡程度の土地で現況測量は10万円から20万円、確定測量は40万円から60万円くらいだね。ただし、役所との話し合いの立会いが必要な場合や近隣トラブルで交渉が必要となる場合は、費用が増えることがあるね。事前に見積もりを取っておくようにしよう。



近隣とのトラブルが起きないようにしたいですね。



測量する際には、隣接所有者との土地境界の話し合いに立ち会うことが必要になるんだ。また、土地家屋調査士が境界確定の測量後に作成した境界確定書には、依頼者が押印しなければいけないよ。



先生、境界確定の測量を依頼したら、その後どのような手続きが必要ですか?



境界確定後、測量図面や境界確定書面が作成されて、それらをもとに、土地登記が行われるんだ。



境界確定の測量や登記にかかる期間はどれくらいですか?



測量から登記完了までの期間は、事案によって異なるけれど、おおよそ3か月程度が目安かな。
隣地所有者との間に発生したトラブルへの対処法



隣地の所有者と土地境界について話し合っても合意できない場合、どのような方法で解決できますか?





合意が難しい場合には、「境界確定訴訟」と「筆界特定制度」という2つの制度が利用できるんだ。ただし、境界確定訴訟には時間がかかり、訴訟費用も相当にかかりますので、簡単には利用できないね。
境界確定訴訟



境界確定訴訟はどのようなものですか?



境界確定訴訟は、裁判所で土地境界の決着をつけるものなんだ。裁判所は原告と被告の主張にとらわれず、境界を確定してくるんだ。境界の位置について判断できない場合であっても、裁判所が判断して境界を決定するんだね。



境界確定訴訟にはどれくらい時間がかかりますか?
費用はどのくらいですか?



境界確定訴訟は裁判だから、判決が出るまでに数年かかることがあるようだね。費用も、土地の鑑定費用、裁判官・書記官の実地検証費用、弁護士費用など、大きな負担となるよ。だから、土地所有者にとっては必ずしも使い勝手のよい制度ではないんだよ。



それは困りますね。
筆界特定制度



そうだね、最近は境界確定訴訟よりも筆界特定制度を利用するケースが増えているんだ。



筆界特定制度とは何でしょうか?





筆界特定制度は、裁判所ではなく、法務局が管理している制度なんだ。土地家屋調査士が実地調査を行って、法務局に筆界特定の申請を行うものだね。法務局は、調査結果に基づいて土地の筆界を特定するんだ。



境界確定訴訟と筆界特定制度の違いは何ですか?



境界確定訴訟は裁判所が決定するもので、訴訟費用が高く、時間がかかるんだよね。
これに対して、筆界特定制度は法務局が管理する制度で、費用や手続き期間は比較的短く済むものなんだ。ただし、筆界特定制度はあくまで登記上の問題を解決するものであって、隣地所有者との紛争解決には必ずしも効果があるわけではないんだよ。



筆界特定制度のほうが使いやすそうですね。



その通りだね。筆界特定制度は、訴訟よりも早く境界確定ができ、費用も軽減されることがメリットとなっているんだ。通常、申請から特定までの期間は6ヶ月から9ヶ月程度で、費用も100万円以下くらいになるのが一般的だね。



ただ、筆界特定は法的に確定されたわけではないんですよね?



そうなんだよ。筆界特定制度は、あくまで本来あった筆界を明らかにするだけで、行政処分ではなく筆界を形成する力は持たないんだ。そのため、筆界特定後に境界確定訴訟が提起されると、別の位置に筆界が決まる可能性もあるんだよ。



それでは意味があるんでしょうか?



実務上、筆界特定がされた後に境界確定訴訟が提起されても、筆界特定の結果が考慮されるため、異なる結果になることはほとんど無いようだね。



それでは、筆界特定制度を利用する際には、どのような手続きが必要なのですか?



まず、土地家屋調査士に依頼し、筆界特定の申請書を作成してもらうんだ。その後、申請書と必要な添付書類を法務局に提出すればいいね。



わかりました。境界確定と測量の重要性を理解することができました。ありがとうございました。
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