相続財産が多い場合は、どんな財産に相続税が課税されるのか、課されないのか分かりづら辛いでしょう。相続税が課せられる財産は、本来の相続財産とみなし相続財産です。それぞれの財産に入る物は具体的には何か、注意すべき点など、この記事でご紹介しています。
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相続税の課税対象となる財産とは


相続財産には、相続税がかかる財産と、かからない財産があります。
相続税がかかる財産には、民法で決められた本来の相続財産と、民法では相続財産に該当しないも財産であっても、相続税法では相続財産とみなされる財産、すなわち、みなし相続財産などがあります。今回は、相続税が課される財産について詳しく解説していきます。



母親が亡くなったのですが、相続税について教えてください。相続税はすべての財産にかかるのでしょうか?



いや、すべてにかかるわけではないね。相続財産には、相続税がかかる財産とかからない財産があるよ。



どのような財産に相続税がかかるのでしょうか。



相続税がかかる財産を相続財産というけれど、相続財産には、本来の相続財産だけでなく、みなし相続財産、相続時精算課税制度を適用した財産、納税猶予制度を適用した財産、相続開始7年以内の間に贈与した財産などがあるんだ。



なんだか難しくて、よくわかりません。みなし財産というのはどういう意味でしょうか?





詳しく説明してあげよう。本来の相続財産とは、民法の決まりによって相続されたり遺贈されたりした財産のことなんだ。現金や預貯金、有価証券、土地、建物、自動車、書画骨董などがあるね。また、著作権や特許権などの権利や、貸付金などの金銭債権もこれに該当するんだ。



目に見えない権利などは、私たち素人が見つけるのは難しそうですね。相続財産を見落とすと脱税になるんですか?



そうだね。相続税がかかる相続財産を見落とすと、相続税の申告漏れになってしまうよ。申告漏れになると、過少申告加算税の追加支払いという厳しいペナルティを課されることになるんだ。相続税申告は税理士に任せたほうがいいよ。
一番よく見落とされるのが手許現金なんだけどね。



手許現金を見落とすことなんてあるのでしょうか?手元現金って、紙幣や硬貨ですよね?そんなものは見つかれば明らかに相続財産だとわかりますよね。



そうだね。亡くなった方の財布の中に入れておいた現金とか、タンスの引き出しに保管していた現金だったら、すぐにわかるよね。でも、家族が預かっている現金が見落とされるんだよ。



家族が預かることなんてあるのでしょうか?



お亡くなりになる直前は、ベッドで寝たきりで生活できないケースが多いよね。その場合、病院の医療費の支払いなんかのために、家族が亡くなった方の銀行預金から現金を引き出しておくんだよ。相続税申告のときに預金通帳を見ていると、お亡くなりになる直前に、1日の引き出し限度額である50万円が毎日続けて出金された記録を見ることが多いよ。それらは、家族が現金として預かっていたり、家族が自分の銀行口座へ預け入れていたりするんだ。これを直前引出預金、名義預金などと呼ぶのだけれど、これは相続財産に含めておかなければいけないんだよ。



それは注意が必要ですね。
みなし相続財産とは



ところで、みなし相続財産というのはどういうものでしょうか。本来の相続財産とは何が違うのでしょうか?





みなし相続財産というのは、民法の相続財産ではないけれど、相続税がかかる財産のことなんだ。相続財産とみなすという意味で「みなし相続財産」と言うんだね。例えば、死亡保険金や死亡退職金、個人年金などの定期金を受け取る権利などがあるよ。



そうなんですか。相続財産ではないのに相続税がかかるんですね。相続時精算課税制度を適用した財産にも相続税がかかると言われましたが、相続時精算課税制度とは何でしょうか?





相続時精算課税制度というのは、被相続人が生前に取得した贈与財産を相続税の課税対象とする制度なんだ。この制度を利用すると、生前に贈与した財産のうち、年間110万円の基礎控除額を超える部分に後から相続税がかかるんだね。ただし、その金額の累計額が2,500万円を超えたら20%の税金を前払いすることになっている。この財産は、相続時にはすでに贈与されていて残っていないけれど、相続財産に加算して相続税を計算することになるんだよ。



みなし相続財産に納税猶予制度を適用した財産というのがありましたが、これは何でしょうか?



これは、非上場株式の贈与税の納税猶予制度の特例の適用を受けて取得した株式のことだね。会社経営者が持っている自分の会社の株式を親から子どもへ贈与したときに、税金がかからなくなるお得な制度なんだ。ただし、この株式を相続財産に含めなければいけないんだよ。



結局相続税がかかるならば、税金がかからないお得な制度というのは嘘なのでしょうか?



税金をゼロにするためには、税金がかかるタイミングで、その都度、納税猶予制度を繰り返し使うことが必要なんだ。だから、免除ではなく猶予というんだね。相続税がかかるときは、非上場株式の相続税の納税猶予制度の特例の適用を申請しなければいけなんだね。



わかりました。それでは、相続開始7年以内間に贈与した財産というのは何でしょうか。贈与税を支払ったら終わりではないのでしょうか。





そうだね、令和5年度税制改正で3年間から7年間に延長されたんだけれど、相続発生前7年間のうちに贈与した財産は、相続財産に加算しなければいけないだ。もちろん贈与税を支払っていたのであれば、それは相続税から控除されるよ。



先生、今日はたくさん勉強になりました。ありがとうございました。
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