不動産を売却して利益を得た場合、確定申告することで所得税と住民税を納めなければいけません。今回は不動産の売却において発生する税金、すなわち、分離課税の譲渡所得に課される税金の計算方法と税負担が軽くなる特例についてご説明しましょう。
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譲渡所得の計算方法


岸田先生、昨年、母が他界したのですが、相続した実家が空き家になってしまいましたので、今回、売却することになりました。
売却して利益が出ると税金がかかると聞いたのですが、どれくらいの税金を支払うことになりますか?



なるほど、ご実家を売るんだね。それだと、「儲けの2割が税金」だと考えたらいいよ。ただ、税金が安くなる特例が使うとお得になるので、しっかりと検討しておいたほうがいいね。



それは重要な話ですね!ぜひ教えてください。不動産売却の税金はどのように計算されるのでしょうか。



所得税の計算に分離課税と総合課税があるのは知っているよね?



はい、会社からもらう給料や自営業の稼ぎと合算して計算するのが総合課税、合算せずに単独で計算するのが分離課税ですよね。



そうだね。よく勉強しているね。
譲渡所得には、総合課税と分離課税があるんだけど、不動産売却の場合は、必ず分離課税になるんだ。総合課税になることはないので、分離課税だけ知っておけばいいよ。



わかりました。どのように計算するのでしょうか?





不動産の譲渡所得は、売れた金額から、取得費と譲渡費用、特別控除額を差し引いて計算するんだ。それに税率をかけることになるね。





ただし、税率は所有期間によって違っていて、短期と長期の2種類の税率があるんだよ。不動産を売却した年の1月1日までに、所有期間が5年以下の場合は短期、5年超の場合は長期となって、短期の税率は所得税30%と住民税9%、長期の税率は所得税15%と住民税5%だね。いずれの場合にも、所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が加算されるけどね。
取得費の範囲



取得費というのはどのような費用でしょうか?





取得費は、基本的には、買ったときの金額や建物を建築したときの費用だね。これに加えて、購ったときの登録免許税や不動産取得税、入居者に支払った立退料、買ったときに仲介業者へ支払った手数料などがあるね。購入のための借入れを行っていた場合、使用開始するまでの期間に支払った借入金利息も取得費に入れていいんだ。ただし、建物の購入価額や建築費については、減価償却費を差し引いた残額が取得費になるんだ。



減価償却の計算を行うのですね?実家を買ったときに売買契約書を見たのですが、土地と建物をセットで買っていて、購入金額は合計額1本しか記載されていないようなのです。
この場合、どうやって計算すればよいでしょうか?



土地付きの建売住宅のように、土地と建物をセットで購入した場合には、全体の合計額1本で売買するから、その内訳がわからないケースが多いんだよ。その場合、計算のやり方は2つあるんだ。





一つは、建物の標準的な建築価額によって建物の取得価額を推測し、それを全体の合計額から差し引いて土地の金額を計算する方法。
建物の標準的な建築価額は、国税庁のウェブサイトに記載されているものを使えばいい。





もう一つは、土地と建物の合計額を、それぞれの固定資産税評価額によって按分する方法だね。



今回は、家中探し回って、タンスの奥から、昭和時代に締結されたボロボロの売買契約書を見つけました。もし売買契約書が見つかっていなかったら、取得費はどうするのでしょうか?



実は、先祖代々相続されてきたご実家の場合、購入時の売買契約書が残っていないケースがほとんどなんだ。その場合、取得費がわからないから、売った金額の5%を取得費にすることができるという「概算取得費」の規定が使えるんだよ。取得費がわかっている場合であっても、売った金額の5%を下回っているならば、概算取得費のほうが有利だから、売った金額の5%を取得費としてもいいんだよ。
譲渡費用の範囲は



譲渡費用というのはどのような費用でしょうか?





譲渡費用というのは、売るために直接かかった費用だね。不動産の仲介業者に支払う手数料がわかりやすいだろうね。仲介手数料は、一般的に、売った金額の3%プラス6万円だね。それ以外にも売主が負担した印紙税、入居者に支払った立退料、土地を売るために建物を取り壊した場合の取壊し費用などがあるね。



取得費5%、譲渡費用3%とすると、売った金額の9割以上が譲渡所得となるわけですね。その2割だと税金は高そうですね。
特別控除額





譲渡所得に課される税金を安くするための特例がいくつかあるけれど、最も重要なものが、マイホームを売った場合の3,000万円特別控除、相続した空き家を売った場合の3,000万円特別控除、そして、長期譲渡の軽減税率だね。





3000万円の特別控除というのは、一点の要件を満たすと、これを譲渡所得から差し引くことができる制度なんだ。君の場合は、相続した空き家を売った場合の3,000万円特別控除と長期譲渡の軽減税率が使える可能性があるね。これが使えたとすれば、3000万円特別控除額を差し引いて、譲渡所得を小さくすることができるよ。これに加えて軽減税率を使えば、所得が発生しても税率が低くなるね。
長期譲渡の軽減税率



どれくらい税率が低くなるのでしょうか?





基本的に長期譲渡の場合は、所得税15%、住民税5%が適用されるけれど、10年を超える期間にわたって所有していたマイホームの売却であれば、譲渡所得の6000万円以下の部分だけ、税率が14%に下がるんだよ。6000万円超の部分の税率は同じだけれどね。



それはいいですね!



空き家を売った場合の3,000万円特別控除については、別の動画で解説しているから、そちらを視ておくようにね。
申告手続き



実家は年内に売却する予定なんですが、申告はいつ行えばよいのでしょうか?



不動産を売って譲渡所得が出た場合、翌年の3月15日までに確定申告しなければいけないよ。譲渡損失が出た場合には、確定申告をする義務はないけれど、特例を適用するために、確定申告するケースもあるね。



わかりました。今回は利益が出そうなので、確定申告を行うつもりで進めたいと思います。ありがとうございました。
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