
相続した不動産を売った場合、相続するための相続税を払い、続けざまに売却したときの所得税を支払うこととなります。税金のダブルパンチです。この点、支払った相続税の金額に応じて、所得税の金額を安くしてくれる特例があります。
今回は、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」について解説いたします。
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譲渡所得の取得費加算の特例とは?


岸田先生、先日お話したように、母から相続した実家を売却することにしました。実家を売ったときには税金がかかるのでしょうか。



そうだね、不動産を安く買って高く売れば、お金を儲けることができるけれど、相続したご実家を売って儲けが出ると、そこには所得税がかかるよ。



どれくらい税金がかかるのですか?





儲かった金額の2割だね。売った金額から買った金額を差し引くと儲かった金額が計算できるよね。これを譲渡所得というんだ。譲渡所得に20%をかけた金額が、所得税と住民税の合計だね。



私の実家は、母が祖父から相続したものです。祖父が家を買ったときの昔の金額なんてわからないです。どうしましょうか。



そうだね。売買契約書が残されていればいいけれど、それがわからないときは、売った金額の5%を買った金額と仮定して計算することができるよ。





そうすると、儲けは売った金額の95%ですね!たくさん税金がとられてしまいそうです。何とか、税金を安くしてもらうことはできませんか?





相続した不動産を売却したときに所得税を安くするには、特例を使えばいいよ。「相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例」と、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」の2つあるね。



なんだか難しそうですが、詳しく教えていただけませんか?





よし、今回は、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例について、わかりやすく解説しよう。「相続した空き家に係る譲渡所得の3千万円特別控除の特例」については、こちらの動画で解説しているので、後で見ておいてね。



はい、お願いします!





これは、相続によって取得した土地や建物、株式などの相続財産を、3年10ヶ月以内に売った場合、それを相続するときに支払った相続税を、売ったときの譲渡所得から減額してくれる制度なんだ。
具体的には、その財産を買ったときの金額、これを取得費っていうんだけれど、取得費に相続税の金額を加算するという計算を行うんだよね。そうすると、引き算した結果として譲渡所得が小さくなるから、税金が安くなるってことはイメージできるよね。



それはいいですね。



ただ注意点があって、この特例は、もう一つの特例である、相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例と併用することはできないんだよ。
どちらを使うほうが有利なのか、事前に比較しなければいけないね。
譲渡所得の取得費加算の特例の適用要件



この特例は、うちの実家の相続のときに使えますか?





この特例を適用するためには、4つの要件を満たしていなければいけなんだ。それらは、相続または遺贈により財産を取得した人であること、相続税が課された人であること、その財産を相続発生から3年10ヶ月以内に売ったこと、確定申告することだね。



私の場合、相続で取得していますし、相続税も支払うことになりそうです。早く現金が欲しいので、3年10か月以内には実家を売るつもりです。確定申告はもちろんやります。



それであれば、この特例を使うことができそうだね。
取得費加算を行うときの計算





取得費加算というのは、取得費に相続税の金額を加算することだとおっしゃっていましたが、私が支払った相続税の全額を加算することができるのですか?





いや、支払ったさすがに全額ではないよ。
相続した財産のうち、売却した財産の大きさの割合を計算して、その割合に相当する相続税だけ加算することができるんだ。
マイナス財産である借入金を差し引く前、プラス財産の総額で計算することに注意が必要だね。



私の場合、相続する財産の総額は8千万円くらい、売却しようとする実家が4千万円くらいになりそうです。
その場合だとどのような計算になりますか?





例えば、相続税申告の結果として、君が相続税を400万円支払うことになったと仮定しようか。
売却した土地が相続財産の全体に占める割合は2分の1だから、その割合で相続税の金額を按分すると、400万円かける2分の1の、200万円となるよね。この金額だけを取得費に加算することになるんだ。



なるほど、よくわかりました。取得費に加算する金額がわかれば、譲渡所得を計算することができますね。ありがとうございました。
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