空き家3,000万円特別控除の特例6つの条件を理解してしっかり節税を!
相続した財産を売った場合、それを相続したときの相続税を払って、続けざまに売却したときの所得税を支払うこととなり、税金のダブルパンチを食らいます。そこで、支払った相続税を譲渡所得から差し引いて、所得税負担を軽くしてくれる特例があります。この特例を適用すると、所得税を節税することができるのです。今回は、「相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例」について解説いたします。
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「相続により取得した空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除の特例」とは
岸田先生、先日お話したように、母から相続した実家を売却することにしました。所得税が安くなる特例があると聞きましたが、それはどんな特例でしょうか?
その特例は2つあって、「相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例」と、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」だね。
相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例について教えていただけませんか?
以前、譲渡所得の計算方法を説明したけれど、それは別の動画を視聴してもらうとして、ここでは、相続した空き家3,000万円特別控除について詳しく説明しよう。これは、空き家となった被相続人の自宅を相続した相続人が、耐震基準を満たす修繕をして家屋と敷地、を売却したか、取壊した後で敷地だけを売却した場合に、譲渡所得から3000万円を控除してくれる特例なんだ。つまり、所得税が安くなるんだよ。
この特例の注意点は、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例と併用することはできないということなんだ。両方の特例の要件に当てはまる場合には、有利な方を選ぶといいよ。
適用要件
この特例を適用することができる家屋と敷地は、どのようなものでしょうか。
この特例を適用するための家屋の要件は、次の6つの要件すべてに当てはまるものなんだ。すなわち、相続開始の直前に亡くなった人が住んでいた住居であること、1981年、すなわち昭和56年5月31日以前に建築されたものであること、耐震基準を満たしていること、区分所有建物登記がされている建物でないこと、相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと、相続時から売却時までずっと空き家であったことだね。
耐震基準を満たしていない場合、修繕すればいいのですよね?
そうだね。耐震基準を満たすように修繕すれば、要件を満たすことができるよ。
空き家ってことは、誰かが住んでいるとダメということですか?
そうだね。事業用に使ったり、賃貸したりするのはダメだし、相続人が住んでしまうとダメとだね。
空き家ということが要件なんですね。それでは、家屋を取壊した場合はどうなのでしょうか?
その場合の要件は、相続時から取壊し時までにずっと空き家であったこと、取壊した後のの敷地は、相続時から売却時までに賃貸されていなかったことだね。
家屋と敷地の要件以外にも、この特例を適用することができる要件はありますか?
他にも要件があるよ。期限に関して、売却日が相続時から3年を経過する年の12月31日までだということ。金額について、売った金額が家屋と敷地の合計で1億円以下であること。そして、親子や夫婦など特別関係がある人以外の他人への売却であることだね。
家族に売るのはダメなんですね。売った金額1億円が上限ということは、敷地を分割して1億円を超えないようにすればいいのではないですか?
いや、敷地を分割して売る場合、一部を売った金額が1億円以下であっても、全体をすべて合計した金額が1億円を超える場合には、この特例を適用することができないんだ。空き家や敷地を2人の相続人で相続し、共有となった場合も同じことだね。一人の相続人が持分を6000万円で売り、もう一人の相続人も持分を6,000万円で売った場合、それぞれ売った金額は1億円以下になるので特例を適用することができるように見えるけれど、全体をすべて合計した金額が1億円を超えてしまうので、特例を適用することができなくなるんだ。
老人ホームに入っていた場合
この特例を適用するための要件が、「相続開始の直前に亡くなった人が住んでいた住居であること」だとお聞きしましたが、うちの母は、老人ホームに入っていたのです。自宅におらず、老人ホームに入居していた場合でも特例は使えるのでしょうか?
一人暮らしの老人が老人ホームなどに入所して、自宅が空き家となった後に亡くなった場合でも、次の3つの要件に当てはまる場合には、特例を適用することができるんだ。一つは、亡くなった人が要介護認定や要支援認定などを受けていて、相続開始の直前まで、老人ホーム・介護医療施設・サービス付き高齢者向け住宅などに入所していたことだ。
うちの母親は要介護3の認定を受けていて、老人ホームに入所していましたから、この要件は満たしています。
2つ目は、亡くなられた方が老人ホーム等に入所した時から相続開始の直前まで、その家屋が亡くなられた方が持っている家財や物品の保管場所として使用されていたこと、3つ目は、相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことだ。
そうですね。うちの実家は母がいつでも戻ってくることができるように空けていました。ずっと母の一人暮らしの家でしたね。ときどき掃除に行くことはありましたが、他の家族は誰も住んでいませんでした。
4つ目の要件は、相続時から売却時までずっと空き家であったことだ。
もちろん、事業用や賃貸用に使うことはありませんでしたし、私も別の家に住んでいますから、実家に住むことはありませんでした。そうすると要件をすべて満たしていることになりそうですね。
そうだね。この特例を使うことができれば、所得税を安くすることができるね。ただし、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」と併用することができないから、どちらが有利になるか、比較検討したほうがいいよ。
どちらも譲渡所得から差し引く計算を行うことはわかるよね?3000万円特別控除の特例だと、3000万円を差し引くし、取得費加算の特例だと、売った財産に係る相続税額を差し引くことになる。そうすると、3000万円が分岐点になるかな。つまり、売った財産に係る相続税額が3000万円を超えるときは、取得費加算の特例を適用したほうが有利になるの対して、3000万円未満の場合は、3000万円特別控除を適用したほうが有利になるね。
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