【相続】知っておきたい法定相続分とは?遺産の分け方の基本ルールを解説
相続が発生して、相続人で遺産を分けるときには、無視することのできない法律があります。それが民法の法定相続分です。民法は難しくてよくわからないとか、どこまでの親族が相続人になるか、といったさまざまな疑問があると思います。今回は、法定相続分について、詳しく説明します。
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法定相続分の仕組み
先生、私の母が他界しました。これから遺族で遺産を分けようと思うのですが、分け方がよくわからないのです。本で調べてみると、民法には法定相続分という割合が決まっているらしいのですが、この法定相続分とはなんでしょうか?
法定相続分というのは、亡くなった人の財産を相続するときに、各相続人の取り分として、法律上定められている割合のことをいうんだ。法律上定められていると言っても、遺言書があれば、それに従うことになるし、遺言書が無くても、遺産分割協議で話し合えばいいから、法定相続分で分ける必要はないんだけどね。まぁ、話し合いの目安になる割合、話し合いがまとまらなくて裁判で争うときに使う割合だと考えたらいいよ。非常事態にときにしか使わないんだ。ちなみに、亡くなった人との関係によって、法定相続分の割合は変わってくるんだよ。
法定相続人とは
亡くなった人との関係というのは、どういう意味でしょうか?よくわからいいので、ゼロから教えていただけないでしょうか。
よし、ここは丁寧に教えてあげよう。まず、亡くなった人の配偶者、つまり奥様やご主人は、必ず相続人となるんだ。ただし、この配偶者っていうのは、市区町村役場に結婚届を出した人に限るからね。内縁関係や事実婚の相手は、相続人にならないんだね。
最近は、高齢の男性がものすごく若い女性と結婚するケースがありますが、結婚生活の期間の長さとかは関係あるのですか?
いや、そんなのは関係ないね。結婚届を出して、その翌日にご主人が死んだとしても、配偶者として相続人となるんだ。ニュースで話題になった事件のようなケースだね。
もちろん、そうだ。今回は、君がお母様の相続人になったんだよね。亡くなった人の子どもはもちろん相続人になるし、子どもがいない場合は、両親、兄弟や姉妹も相続人になることがあるよ。法律用語で言うと、配偶者のことを「配偶者相続人」、それ以外の親族を「血族相続人」と言うんだ。血族相続人がいる場合には、配偶者と親族が、ともに相続手続きを行うことになるね。
そうだね。ただし、血族相続人には順位があるんだ。1番目は、当然だけれど、亡くなった人の子どもだ。しかし、子どもがすでに亡くなっている場合、その子供、つまり亡くなった人の孫がいれば、その孫が相続人になる。これを代襲相続っていうんだ。
養子も子供として取り扱われて、相続人になるのですか?
法律上、子どもというのは、実子であろうが養子であろうが、そこは関係ないね。養子も相続人になる。養子は、育ての親と生みの親、どちらが亡くなった場合でも相続人となるから、ちょっとお得なんだよね。ただし、特別養子縁組をしている場合は、生みの親との親子関係が消滅するから、育ての親が亡くなったときにだけ相続人となるんだ。
例えば、こんなケースはどうでしょうか?結婚してすぐにご主人が事故で他界してしまうようなケースです。奥様のお腹の中に胎児がいた場合、その子も相続人になりますか?
それは、鋭い質問だね。生まれる前の胎児も、相続人になるんだよ。
そうなんですね。それでは、結婚していない相手との間に子どもがいた場合は、どうでしょうか?相続人になりますか?
その場合、亡くなった人が、子どもを認知しているかどうかによるね。認知しているときは相続人になるよ。
それでは、亡くなった人が再婚していた場合で、再婚相手の奥様に連れ子がいたとすれば、その子供とは血のつながりがありませんが、相続人になるのですか?
その場合、亡くなった人が連れ子と養子縁組をしていれば、その子は相続人になるね。養子縁組していなければ相続人にならないから、注意が必要なケースだね。
なるほど。血のつながりがなくても、法律で親子関係が認められていれば、相続人になるということですね。
最近は、子どもがいないご夫婦も多くなってきているようですね。その場合は、どうなるのでしょうか?
子どもや孫がいないとき、血族相続人の2番目の順位は、亡くなった人の両親になるんだ。ただ、自分の親のほうが先に他界しているはずだから、一般的には、血族相続人の3番目の順位になるね。つまり、亡くなった人の兄弟や姉妹が相続人になるんだ。もし、兄弟や姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子どもたち、つまり亡くなった人の甥っこや姪っこが相続人となる。つまり代襲相続だね。兄弟や姉妹も年齢的には亡くなった人と同じくらいだろうから、甥っ子や姪っ子が相続人となるケースのほうが多いね。
法定相続分の計算方法は?
法律で決められた相続人について理解することができました。法定相続人が相続する割合についても、法律で決まっているということですが、どのような割合でしょうか?
それは法定相続分として決められているんだ。これも順位によって変わってくるから、順番に説明しよう。まずは配偶者相続人がいる場合だね。配偶者と子どもが相続人の場合は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1を相続することになっているんだ。子どもが複数いる場合には、この2分の1を、さらに子どもの人数で均等に分けることになるね。2人だとすれば、2分の1を2人で分けて4分の1になるね。同様に3人いれば6分の1かな。
先ほどの話では、養子や認知した子どもも法定相続人に入るということでしたよね。そういった子どもにも法定相続分が与えられますか?
それは当然に与えられるよ。法律上の子どもに、実子か、養子かは関係ないし、結婚している相手との間に生まれた子どもか、認知した子どもかについても関係ないよ。すべての子どもに均等に法定相続分が与えられているんだ。
いや、それが違うんだ。相続するのが配偶者と父母の場合は、配偶者が3分の2、父母が3分の1となるんだ。お父様とお母様の2人ともいらっしゃる場合は、3分の1を2人で分けて6分の1ずつとなるね。
現実的には、亡くなった人の兄弟や姉妹が相続することになるでしょうから、その場合、兄弟や姉妹の法定相続分はどうなりますか?また違ってくるのでしょうか?
そうなんだ。配偶者と兄弟や姉妹の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となるんだ。配偶者との関係性が遠くなるに従って、法定相続分が少なくなると覚えておけばいいよ。兄弟や姉妹が複数いる場合は、やはり4分の1を均等に分けることになるね。ただし、父母の片方だけが同じ兄弟の場合、これを半血兄弟と言うんだけど、父母の両方が同じ兄弟の法定相続分の半分になるというルールがあるんだよ。
半血兄弟ですか?お父さんが再婚して生まれた異母兄弟のケースですね?
そうだね。芸能人でよくあるケースだよね。あとは、相続を放棄する人がいる場合、相続放棄した人は最初から相続人ではなかったものとして扱われるので、その人を除いて法定相続分が計算されることになるんだ。
兄弟や姉妹はすでに他界しているケースが多いと思いますが、甥っ子や姪っ子の法定相続分はどうなりますか?
その場合は、兄弟や姉妹と同じだよ。代襲相続となって、そのまま引き継がれるんだ。
それでは、うちの母の相続の場合はどうなるのでしょうか?父はすでに他界しておりますので、相続人は私と弟の2人しかいません。
配偶者がいない場合というのは、2次相続でよくあるケースなんだけど、子供の法定相続分が100%になるね。弟さんと均等に分けることになるから、2分の1ずつということだね。
法定相続分を持たない人は相続できない?
先生、法律で決められた相続人以外に、相続はできないのでしょうか?亡くなった人にとって、家族以上に深いつながりのある人もいますよね。
法律上の相続で財産を受け取ることはできないけれど、亡くなった人の遺言があれば、財産を受け取ることができるよ。亡くなった人が遺言書を書いて、財産を渡したい人を決めることを「遺贈」と言うんだ。また、遺言で決めた分け方のことを「指定相続分」と言うんだね。
遺言書がある場合の法定相続分は?
でも、ちょっと待ってください。遺言がある場合、法律で決められた「法定相続分」はどうなるんですか?
遺言による「指定相続分」と、法が定める「法定相続分」では、どちらが優先されるかということだよね?いい質問だ。
そうです。財産の100%を他人に遺贈されてしまったら、法律で決められた相続人が財産を全く受け取れなくなってしまうことになりませんか?愛人に100%財産を残すと書かれている遺言も想定されますよね。
その場合にも法律でルールが決まっていて、遺言書がある場合は、「法定相続分」より「指定相続分」が優先されることになっているんだよ。法定相続人である子供がたくさんいたとしても、遺言書で愛人に大きな財産を遺贈させたいと書かれるケースはたまにあるようだね。ただ、他人に遺贈することで問題となるケースは、そんなに多くないので気にしなくていい。問題となるのは、法定相続人の1人だけに極端に大きな財産を渡すという遺言が残されているケースなんだよ。
長男が家を継ぐ、長男に会社を承継することで、長男が多めに財産を受け取るケースですね。
そうだね。日本の場合、長子相続が習慣になっていたから、長男がほとんどの財産をもらい、それ以外の子供、特に女の子にはほとんど遺産が渡されないケースが多く見られたようだね。最近は、男女は平等で、兄弟や姉妹は、平等に遺産をもらうべきだという考え方が普及してきているようだね。
遺産の全てを長男に遺すといった遺言書があったら、どうなってしまいますか?他の子どもたちにとっては、とても不公平に思えますが。
そういうことが起こらないように、法定相続人には「遺留分」というものが、法律で定められているんだ。法定相続人は、最低限の割合の遺産を相続できるように保障されているんだよ。これは遺言で侵害されたとき、裁判で争えば、取り返すことができるんだ。
なるほど、遺言でも親の思い通りの分割はできないんですね。最低限の割合の遺産とは、具体的に、どれくらいなんですか?
その割合というのが、遺留分なんだ。遺留分というのは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の取り分のことを言うんだ。ここで、先ほど話した法定相続分の計算が出てくるんだよ。遺産の分け方は、通常は遺言書や遺産分割協議で決まるから、法定相続分の計算を使うケースはほとんど無いんだけど、遺留分の話になると、法定相続分の計算が使われることになるんだ。
なるほど、法定相続分の計算は理解しています。法定相続分が遺留分となるのでしょうか?
配偶者や子ども、孫であれば、遺留分は法定相続分の2分の1なんだよ。両親は法定相続分の3分の1だね。兄弟や姉妹には、遺留分は無いんだ。君の場合は、法定相続分が2分の1だったから、その2分の1ということで、4分の1が遺留分ということになるね。お母様の遺産の4分の1は、必ず受け取ることができるということになっているんだよ。
そうなんですね。それでは、実際に遺言によって受け取った遺産が遺留分よりも少なかったとき、どうすればいいですか?
そのときは、自分がもらえるはずの遺留分が侵害されたということになるので、遺留分侵害額の請求権が発生するんだ。つまり、たくさん遺産を受け取った人に対して、遺留分侵害額に相当するお金の支払いを求めることができるんだよ。これを遺留分侵害額の請求というんだ。ただし、家庭裁判所に対して遺留分侵害額の請求に関する調停を申し立てなければいけないんだよ。調停で合意できなければ訴訟になるね。
そうなんですね。理解できました。ありがとうございました。
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