今回は、ビジネス・デュー・ディリジェンスの基本について解説します。
ビジネス・デュー・ディリジェンスと聞くと、これまでM&Aを経験された方であればピンとくると思いますが、経験のない方はサッパリわからないのではないでしょうか。
そこで今回は、ビジネス・デュー・ディリジェンスはなぜ行うのか、どのように行うのか、その結果を経営にどのように活かすのかについて、公認会計士がわかりやすく解説いたします。
この動画を観ると、ご自身の勤務先に突然M&A案件がやってきて、その検討作業を担当しろという命令があっても、落ち着いて仕事を始めることができるようになるというベネフィットを得ることができます。ぜひ最後までご視聴ください。


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ビジネス・デュー・ディリジェンスとは?


岸田先生、ビジネス・デュー・ディリジェンスって何ですか?



ビジネス・デュー・ディリジェンスとは、M&Aで買収を考える時に、対象事業がうまくいっているか、儲かっているか調べることだよ。それをもとに、事業計画が適切かどうかを見極めたり、買収価格を決めたり、事業戦略を立てたりするんだ。



どんなことを調べるんですか?



市場の状況や対象事業の強みや課題を分析して、事業計画を必要に応じて修正することが主な目的だよ。また、対象事業が単独で経営を続ける場合と、自社と統合してシナジー効果が出る場合の2つのケースを想定して考えるんだ。



シナジー効果って何ですか?



シナジー効果とは、企業同士が連携し、互いに機能を活用したり協力したりすることで得られる相乗効果のことだよ。1+1が2より高くなる状態を意味するんだ。



なるほど、シナジー効果が上手く活用されれば、もっと利益を増やすことができるんですね。



そうだね。ビジネス・デュー・ディリジェンスでは、まず対象事業が単独で経営を続ける場合の事業計画を調べて、買収価格を考えるんだ。そのうえで、自社と統合してシナジー効果が出ることを想定して買収価格を考えるよ。



どのようなポイントに注目すればいいんですか?



売上高から売上原価と販売費・一般管理費を差し引いた営業利益が一番重要だよ。市場や対象事業の状況を調べて、売上や売上原価や販売費・一般管理費がどのように変わるかを分析するんだ。



ビジネス・デュー・ディリジェンスには、それ以外にも目的があるんですか?



もう1つの目的は、買収後の事業戦略を立てることだよ。対象事業を調査することで、市場の将来や対象事業の強みや課題がわかるんだ。その結果をもとに、買収後の事業戦略を考えることができるよ。



なるほど、ビジネス・デュー・ディリジェンスは対象事業をよく理解して、適切な買収価格を決めるために重要なんですね。





その通りだ!ビジネス・デュー・ディリジェンスは、買収価格だけでなく、事業の競争力を強化するための戦略や、将来的な成長の見通しを立てるためにも役立つんだ。だから、ビジネス・デュー・ディリジェンスをしっかり行うことが、M&Aを成功に導くんだよ。
ビジネスDD三つの視点



先生、ビジネス・デュー・ディリジェンスの調査はどのような視点から行われるんですか?





いい質問だね。実は、ビジネス・デュー・ディリジェンスでは主に4つの視点から調査が行われるんだ。
まず一つ目は、外部の事業環境だね。売上や市場、競合状況を調べ、コストについても詳しく調査するんだ。



なるほど、外部の事業環境を調べるんですね。他にはどんな視点がありますか?





次に、内部の経営資源を見るね。これは、QCDすなわち品質・コスト・納期や、4Mすなわち人、機械、材料、方法の観点から分析されるんだ。さらに、情報システムの統合やデータ移行が問題なく行われるかを確認して、課題があれば対応策を検討する必要があるね。



情報システムまで調べるんですね。他にどんな視点があるんですか?



あとは、ガバナンスの視点だね。これは、対象事業の経営が自社の基準に合っているかどうかを調べることだ。例えば、子会社管理や決裁権限などが適切に運用されているかをヒアリングして確認するんだね。
一般的なビジネスDDの進め方



個人的に知りたいのですが、外部の事業環境の視点でデュー・ディリジェンスを実施する場合、具体的にどのように進められるんですか?





外部の事業環境のデュー・ディリジェンスは、3つのステップで進めるんだ。まずは、対象事業の市場の将来や強み・弱みを調べ、他社と比べてどれくらい優れているか単独で評価する。市場環境が変わっても問題ないかもチェックする必要があるね。



事業の強みを見極めることが重要なんですね。



次に、事業価値を向上できる可能性を分析するんだ。単独で売上やコストを改善できるか、また自社と統合することでどれくらいのシナジー効果が発揮され、利益が増えるかを検討する。ただし、シナジー効果がマイナスになることもあるので注意が必要だね。その際、対象事業の経営陣と話し合い、事業価値向上の可能性を議論しなければいけない。



M&Aの結果として利益が増加すると大成功ですね!



最後のステップでは、事業計画を修正するんだ。対象事業の経営陣が作った事業計画が現実的かどうかをチェックし、改善の余地があれば修正する必要があるね。その際、シナジー効果も考慮することになるね。



受け取った事業計画をそのまま採用することはできないんですね。





これらのステップを終えたら、将来予測の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を作成して、事業価値評価や買収後の課題抽出の検討作業に進むんだ。



キャッシュ・フローの計算まで行うんですね!
ビジネスDDを進める体制



ビジネス・デュー・ディリジェンスを進めるチームには、どんな人が必要だと思いますか?





うーん、経営の視点で対象会社の価値を判断できる人と、対象事業の仕組みを理解できる人が必要ではないでしょうか。



そうだね。さらに、製造工程や情報システムに詳しい人も加えることが望ましいよね。



なるほど、チームには様々な専門知識が必要なんですね。



ビジネス・デュー・ディリジェンスは、基本的に対象事業の現状を把握し、分析して、強みや課題を明らかにしたうえで、受け取った事業計画に反映させていくという作業なんだ。しっかりと覚えておくといいよ。



わかりました。M&A案件の担当になっても、落ち着いて対応することができそうです。ありがとうございました。
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