今回は、不動産取引の中で生じた債務不履行について学習します。具体的には、売買契約を結んだ後に、売主がきちんと不動産を引き渡さないようなケースです。債務不履行の3つのパターンと買主側の対応、売主による契約不適合責任の知識をしっかりと学習しましょう。
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危険負担

売買契約を行った後、建物の引渡しまでの間に、大地震が発生して建物が燃えてしまうことをイメージしましょう。
売主は、燃えてしまった建物の引渡しができませんが、買主は売買代金の全額を支払わなければいけないのでしょうか。
その損害を売主と買主のどちらが負担するかが問題となります。これを危険負担の問題といいます。
2022年現在の民法では、売主に責任がない場合であっても、買主が目的を達成できない場合には、買主は売買契約を解除することができます。すなわち、損失の危険を売主が負担するのです。
債務不履行

相手に何かしてもらえる権利を「債権」、相手に何かしなければならない義務のことを「債務」といいました。債務不履行とは、債務者が、正当な理由がないのに、債務を履行しないことです。不動産売買では、売主が不動産を引き渡す債務をきちんと履行しないことが問題となります。履行遅滞、履行不能、不完全履行の3つがあります。
履行遅滞

履行遅滞とは、履行が可能であるにもかかわらず、期限を過ぎても履行しない場合です。
たとえば、売主が引渡し期日を過ぎても不動産を引き渡さなかったり、買主が支払い期日を過ぎても代金を支払わなかったりする場合は、履行遅滞となります。
債務者のせいで債務の履行遅滞が生じた場合、債権者は債務者に対して、損害賠償請求を行うことができます。また、この場合、債権者は、相当の期間を定めて履行の催告をして、その期間内に履行されなかったときは、売買契約を解除することができます。
履行不能
履行不能とは、契約を締結した時は、債務を履行できたものの、その後に状況が変わって、履行できなくなった場合です。
たとえば、建物が火事で燃えてしまい、引渡しできなくなった場合に、履行不能となります。
この場合、売主のせいで、建物を引き渡すことができないのであれば、買主は、直ちに売買契約を解除することができるとともに、売主に対して損害賠償請求を行うこともできます。
また、2022年の民法では、売主に責任が無くても、建物の引き渡しが不可能であるかぎり、買主は、売買契約を解除することができます。
不完全履行
不完全履行とは、とりあえず債務は履行されたものの、それが不完全な場合です。この場合、売主の契約不適合責任の問題が発生します。
契約不適合責任

売主が引き渡した不動産が契約内容と異なっていたり、面積が不足していたりする場合に、買主は売主に対して、損害賠償や契約解除のほか、修理や交換を請求することができ、修理や交換ができない場合は、代金の減額を請求することになります。引き渡された不動産が、契約に適当していなかったことになるため、これを契約不適合責任といいます。
これは、売主は過失があったかどうかに関係なく発生する責任です。これを「無過失責任」といいます。「過失」とは落ち度のことです。
買主がこれらの請求を行うためには、契約不適合の問題を発見してから1年以内に、売主に通知する必要があります。
ただし、この契約不適合責任は任意規定であるため、民法では、「特約」を設けて売主の責任を免除したり、内容を変更したりすることができます。「買主が契約不適合を知った時から1年以内に通知」としていては、買主が発見しない限り、売主はいつまでたっても責任から逃れられませんので、契約不適合責任を負わないという特約を設けることも可能なのです。

しかし、宅地建物取引業法では、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者以外の一般人が買主となる場合、契約不適合責任について、買主が請求できる期間を、「物件の引渡し日から2年以上」とする特約に限ることとなっています。最低2年間は責任を負わなければいけないのです。 また、住宅の品質確保の促進等に関する法律では、新築住宅について、新築住宅の請負人または売主は、その注文者または買主に対して、引渡したときから10年問は、構造耐力上、主要な部分の欠陥について、その責任を負わなければならないこととなっています。
契約解除と損害賠償請求
債務者が債務を履行しないとき、債権者は、相当の期間にわたって催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は契約を解除することができます。催告とは、「早く建物を引き渡せ!」と請求することです。同時に、債権者は、自分に生じた損害賠償を請求することができます。損害賠償とは、発生した損害を補償することです。
まとめ
今回は、債務不履行について学習しました。売主による契約不適合責任について、宅建業法では、宅地建物取引業者が自ら売主となった場合の責任が重くなっている点を覚えておきましょう。
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