ウェルスマネジメント部門やプライベートバンキング部門を持つ金融機関が富裕層のお客様へ盛んに提案している相続税対策、「株特外し」とは何か、ご存知でしょうか?
今回は、株特外し、すなわち、株式保有特定会社に該当しないようにすることで自社株評価を引き下げる相続税対策について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、税制改正で生命保険や不動産を活用した相続税対策ができなくなったと世間で騒がれているけれど、何か他に方法は無いのかと情報を探し回っておられる方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、富裕層が使う相続税対策の定番である「株特外し」について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。
ぜひ最後までご視聴ください。


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相続税対策の基本

岸田先生、富裕層の方々が「株特外し」という手法を使って、相続税の節税を行っているようです。ウェルスマネジメント部門やプライベートバンキング部門を持つ銀行や証券会社の営業担当者が積極的に提案する節税手法だと言われています。株特外しとはどのようなものでしょうか?



株特外しというのは、個人財産の相続税評価を下げる節税テクニックの一つだね。実際には、他のテクニックを組み合わせるのだけど、その中でも、株特外しは最終段階の仕上げのテクニックになるよ。



節税というのは、相続税を減らすことだと理解することはできますが、相続税評価というのはどういう意味でしょうか?





相続税は、大まかに言って、相続財産の合計額に「税率」を掛けて計算するんだ。正確に言うと債務や基礎控除額を差し引くけれど、ここでは単純に考えよう。相続財産の合計額というのは、個別の資産の評価額を一つ一つ足し算で積み上げて計算するんだ。



個別の資産を評価額足し合わせてとおっしゃいますが、土地や建物など時価がわからないものは、どうやって評価するのですか?



その方法が、法律で規定されているんだよ。資産の種類によって方法が異なるんだ。土地だと路線価方式などを使うよね。そうすると、もっとも金額が安くなるような種類の資産に組み替えてやれば、全体の合計額が小さくなるんだよ。



資産を組み替えるというのはどういうことですか?





組み換えの方法の一つは、金融資産から不動産に組み替えること。
これだけで評価額は、ものすごく下がるんだよ。賃貸用のタワーマンションなどを持つと、評価額は5分の1くらいに下がるよ。



えーっ!?そうなんですか?金額が下がるっていうことは、売ったときに損するということではないのですか?



いや、同じ価値であっても、相続税を計算するための評価額だけ下がるんだ。数字は小さくなるけど、価値は変わらない。法律上、そういう規定になっているというだけで、何も問題ないんだよ。



同じ価値がある資産でも、相続税の掛かり具合いが異なるんですね。
株式を保有する会社





もう一つの方法は、これは会社経営者のための節税手法なんだけれど、持株会社を作ることがあるね。会社経営者は、自分の経営する事業会社の株式を持っているけれど、業績好調で事業会社の規模が拡大すると、その株式の評価額が高くなっていくんだ。そうすると、事業会社の株式を持つ持株会社を新たに作って、その株式を持つようにするといいんだ。これによって、評価額を下げることができようになるんだ。



複雑ですね。自分が持株会社の株式を持っていて、持株会社が事業会社の株式を持っているということですね。2階建ての資産ですか。
株特外しの手法





ただし、持株会社が持っている資産のうち、半分以上が株式となってしまうと、評価額が下がらないという特別なルールがあるんだ。このような状態を株式保有特定会社、略して「カブトク」というんだね。だから、持株会社は、株式以外の資産の割合を増やさないといけなんだ。これが「カブトク」を外すという意味で、「株特外し」と呼ばれる節税手法なんだね。金融機関の営業担当者が富裕層に提案する手法だね。



事業会社の株式以外にどんな資産を持つのでしょうか?



基本は不動産だね。不動産そのものの評価額が低いということは教えたとおりだよ。区分所有マンションでもいいし、商業ビル1棟でもいい。あと、船舶や航空機でもいい。資産そのものの評価額は下がらないけれど、投資信託やETFなどの金融資産を購入したり、法人契約の生命保険を契約したりしても株特外しの効果があるね。



個人で航空機を買うことなんてあるのでしょうか?



そうだね。上場企業の大株主など、個人で数百億円という上場株式を持っているから、株特外しの手段として、1機100億円という高額の航空機を購入するんだね。航空機の所有権を小口化した商品も販売されているよ。



それでも、ビル1棟とか航空機とか、とても大きな投資となりますよね。そんなお金があるのでしょうか?



それは事業会社の収益性次第だね。事業会社が儲かっていて、安定的にお金を稼いでいるのであれば、銀行が不動産を担保にして融資してくれるよ。銀行が、株特外しのための不動産や航空機を提案するのは、その購入資金の融資のチャンスを狙っているからだよ。



生命保険の契約はなぜ資産となるのでしょうか?





終身保険であれば、支払った保険料の全額が保険積立金という資産として積み上がっていくんだ。これは保険というよりも貯蓄商品だから、金融資産と同じようなものと考えたらいいね。



このような節税手段は、法律違反ではないのでしょうか?



法律違反ではないけれど、節税目的で、合理的な理由がなく株特外しを行った場合には、株特外しが認められないことがあるので、注意しなければいけないね。たとえば、贈与や相続の直前に、節税だけを目的とした株特外しを実行すると、「租税回避行為」として認められない可能性が高いね。株式以外の資産を取得しようとするときは、資産運用やリスク管理など、その資産を取得する合理的な理由、経済的なメリットを考えておかなければいけないよ。



なるほど!ありがとうございました。
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