
低金利で融資を受けられます!返済不要の補助金がもらえます!と世間で騒がれていますが、意外な副作用があることをご存知でしょうか。
皆さん、こんにちは。公認会計士の岸田です。
今回は、中小企業の支援策のあり方について解説します。このチャンネルをご覧の方々の中にも、返済不要の補助金があるって世間で騒がれているけれど、自分ももらえるのかと思った経営者が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、①ベンチャー企業への悪影響、②事業承継への悪影響、③中小企業支援のあり方について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までご視聴ください。

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ベンチャー企業への悪影響


近年、景気の低迷が続き、中小企業に対する補助金や実質無利子無保証融資など、中小企業を支援する財政政策が打ち出されています。
これらは、コロナ・ショックに対する一時的な対応として、効果的な支援策となることでしょう。しかし、このような支援が長期間続いたときには、重大な副作用があるのではないでしょうか。





現在、アメリカではGAFAMと呼ばれる巨大なハイテク企業が急成長しています。その一方で、日本ではハイテク企業は生まれず、昔ながらの古い事業を営む中小零細企業がたくさんあります。このような違いがあるのは、なぜでしょうか。





ここで副作用というのは、生産性の低い企業が生き残ってしまい、GAFAMのようなハイテク企業が生まれなくなるいうことです。古い事業を止めずに続けていると、売れない製品・サービスを売るために人件費を無駄にし続けることになります。このような経営者は、本来であれば早急に廃業し、新たにハイテク産業に挑戦すべきです。しかし、補助金や無利子融資のおかげで、面倒なことはやらず、相変わらず古い事業を続けながら生き残っているということなのです。





このような企業のことを、ゾンビ企業といいます。ゾンビといえば、マイケル・ジャクソンの「スリラー」ですよね。マイケル・ジャクソンがお墓の中で、生き返った死体とともにダンスをしていました。





ゾンビ企業とは、業績が悪く回復見込みが立たないにもかかわらず、債権者や政府の支援により存続する企業として定義されます。このようなゾンビ企業に対する支援は、長期的に日本経済の衰退を後押ししているといってもよいのではないでしょうか。





以前、菅政権の頃の自民党の「成長戦略会議」において、中小企業の生産性向上のため、中小企業の淘汰によって、経済の新陳代謝を促進することが必要だと議論されていました。その有識者メンバーであったデービッド・アトキンソン氏は、「低賃金労働に依存した企業は、日本社会にとっても労働者にとってもマイナス」、「倒産をしてくれたほうがありがたいくらい」という大胆な主張まで展開されていました。





中小企業白書によれば、中小企業の労働生産性は、大企業の労働生産性を大きく下回るとされています。なんと半分以下です。これが、中小企業の従業員の賃金・給与が安い原因なのです。
この一方で、労働生産性が低く、賃金・給与が安い中小企業を保護するような政策が行われています。はたしてこれが正しいのでしょうか。





昨今、政府は「日本企業の賃上げ」を進めていますが、企業が高い賃金・給料を支払うには、労働生産性を高めなければいけません。お金を支払う財源を生み出すためです。したがって、日本経済全体で見れば、労働生産性の低い企業が減少し、労働生産性の高い企業が増加しなければいけません。まさに新陳代謝です。





しかし、ゾンビ企業に対する補助金や無利子融資のような手厚い支援が行われているため、中小企業の新陳代謝が阻害されているのです。将来性あるベンチャー企業が出て来ないのです。





一つは、ゾンビ企業が商品・サービスを売り続けることによって、市場の供給量が減少せず、値下げ圧力が働くことです。これによって、成長すべき企業が事業を拡大させることができません。





もう一つは、ゾンビ企業が労働者を雇い続けることによって、成長すべき企業の人材採用が進まないことです。これによって、ベンチャー企業で働く労働者が増えず、規模拡大が難しくなります。
結果として、日本には、ベンチャー企業を起業しようとする若者が出てこなくなり、GAFAMのようなハイテク企業が生まれません。中小企業への支援施策がベンチャー企業の足を引っ張っているのではないでしょうか。
事業承継への悪影響





政府の中小企業支援施策として、事業承継を支援しようとするものがあります。近年は、「中小M&A推進計画」など、M&Aを促進することによって、中小企業の生産性を向上させることが目的となっています。
しかし、この一方で、補助金や無利子融資でゾンビ企業を延命させていては、本末転倒ではないでしょうか。





旧態依然とした零細な町工場に、新しい製造設備を導入するための補助金が支給され、資金繰りに行き詰まった企業に無利子融資が提供されています。また、中小企業診断士の指導によって、限界を超えたコスト削減や、無謀な販路拡大が指導されています。このような経営支援が、本当に正しいのでしょうか。





古い事業を営む零細企業の経営者は、早めに引退するとともに廃業して、労働者を他社へ承継したほうがいいでしょう。承継する他社が中堅企業であれば、デジタル技術を活用する資金力があり、労働生産性を向上させることも可能でしょう。
そうすれば、転籍した従業員の賃金・給与水準が上がり、彼らの幸せをもたらすはずです。





日本経済の持続的成長を図るために、情報通信技術の活用が不可欠だと言われています。コスト削減だけでなく、高い付加価値を生み出すことで、労働生産性を上昇させるからです。





もちろん、これまでゾンビ企業で雇われていた労働者が、成長する企業で働くためには、労働者自身がデジタル技術を活用できるように、新しい技能を習得しる必要があります。そのための教育や訓練は不可欠です。
日本経済全体として見れば、情報通信技術そのものを提供する企業、情報システム開発を行う企業、情報システムの販売を行う企業をもっと増加させなければならないのです。
中小企業支援のあり方





政府は、ゾンビ企業へ無駄に税金を投じるよりも、デジタル人材の育成に税金を投じるべきではないでしょうか。賃上げを先行させても、労働生産性が上昇しなければ、中小企業は赤字になります。労働生産性を上昇させるには、産業構造を変えなければいけないのです。





中小企業経営の現場で汗を流し、ギリギリの努力を続ける経営者たちの努力や苦労を否定したくはありません。しかし、少子高齢化時代を生きる子どもたちに、現在のような厳しい低成長経済を引き継いでもよいのでしょうか。未来の日本を見すえ、親世代が痛みを受け入れる覚悟が必要なのではないでしょうか。
まとめ
今回は、中小企業支援のあり方について解説いたしました。
最後に、公認会計士の私が強く訴えたいことがあります。それは、金融機関に投資相談することは、赤ずきんちゃんがオオカミに人生相談することと同じだということです。重要なことは、あなたの周りには、オオカミがたくさんいることに気づくことです。株式や投資信託を売りまくって大儲けする人たちに、投資や資産運用の相談をしてはいけません。この動画を参考に、正しいファイナンシャル・プランニングを実践していきましょう。
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