
近年、金融機関のウェルスマネジメント部門では、企業経営者のお客様の相続・事業承継対策を専門にアドバイスしています。これはどのようなアドバイスなのでしょうか?
今回は、相続・事業承継における生命保険の活用法について解説します。このサイトをご覧の方々の中にも、事業承継にお悩みを持つ会社経営者、会社経営者に対して生命保険を提案する保険営業担当者が多いのではないでしょうか。
株式は、会社を支配する権利証であると同時に、持っている人の「個人財産」でもあります。現預金や不動産のように、子どもたちへ平等に相続すればよいというものではありません。他の財産よりも相続税負担が重くなるケースが多く見られます。
そこで今回は、相続・事業承継に活用できる法人契約の生命保険について、公認会計士がわかりやすく解説いたします。


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事業承継の3つの側面


私は、会社を息子に継いでもらいたいと思っています。息子はいま銀行で働いておりますが、時期が来れば、うちで働かせるつもりです。70歳で社長交代するのであれば、事業承継について何を考えておけばよいのでしょうか。



事業承継を考えるときは、事業性、経営者の生き方、承継手続きの3つの側面から検討しなければいけません。つまり、事業そのものが存続できるかどうか、また、社長ご自身の老後生活と後継者の生き方、株式の承継方法の決定です。



うちの事業は、家電販売と住宅リフォームですが、いま省エネ対策で太陽光発電とリフォームがよく売れているんです。
この調子でやっていけば、利益はもっと増えるでしょう。



自社株式の承継はどのように行われるおつもりですか?



うちの顧問税理士から、うちの株価は1億円くらいだと言われました。これから株価はもっと上がるでしょうね。
事業承継と経営者の相続



ご家族構成も教えていただけますか?





うちは妻と息子、娘2人です。長女は嫁に行きましたが、長男と次女は独身です。



お子様3人ですと、将来のご相続時の遺産分割のことを考えておいたほうがよさそうですね。



私の相続ですか?



そうです。社長には、2つのリスクに対する準備が必要なんです。
一つは社長の死亡リスク、もう一つは相続リスクです。
借入金と死亡リスク





死亡リスクというのは、どのようなリスクですか?



社長にもしものことがあったときに、どのようなトラブルが発生するか考えてみましょう。
社長がいなくなっても、事業が存続できると思われますか?



うちの従業員が経営できるとは思えません。
仕事が減ってしまい、潰れてしまうでしょうね。





そうなると、借入金も返済できなくなるでしょう。残された従業員はお給料をもらえず、失業してしまうことになりますね。
それだけではありません、ご家族は、一家の大黒柱を失うだけでなく、多額の借金を背負うことになることをご存知でしょうか。
社長は、会社の借入金の連帯保証をされておられますよね。



はい、私が連帯保証人となっています。



保証債務は相続されます。社長が突然死亡されると、ご家族全員が引き継なければいけないのです。
もし、会社が倒産すれば、ご家族が8千万円の借入金を返済しなければいけません。返せなければ自己破産するかもしれません。



会社の借金を家族が背負うことになるとは知りませんでした。
それに従業員も失業してしまいますね。私はどうすればよいでしょうか。





社長にもしものことがあれば、銀行は、借入金の一括返済を求めてくるでしょう。そのような事態を乗り切るためには、法人契約で生命保険に加入しておくべきです。残されたご家族や従業員を守るために、死亡保障をつけておくべきでしょうね。



死亡保障というのは何でしょうか?



死亡保障というのは、社長にもしものことがあった場合、契約で受取人と決めておいた方が保険金を受け取る保障のことです。
法人契約というのは、社長個人ではなく、法人すなわち会社が生命保険を契約し、保険料を支払い、社長にもしものことがあれば、会社が保険金を受取るものです。
遺産分割と相続リスク





なるほど、死亡リスクを理解することができました。会社の借入金がゼロになれば、リスクが無くなるということでしょうか。



いえ、その場合に考えなければいけないのが、株価の上昇と、それに伴う相続リスクです。



相続にリスクがあるのでしょうか。教えていただきたいです。



会社の株式は、利益を稼げば稼ぐほど、その価値が高くなります。いま株価が1億円だとおっしゃいましたが、今後は2億円、3億円といった株価に上昇する可能性は十分にあるでしょう。
それは後継者である息子さんに承継させることになりますよね。
そうなれば、自社株式とそれ以外の財産で、金額に大きな差がついてしまい、お子様の遺産分割のバランスが悪くなってしまうのです。





そこで、お嬢様に渡す現金を準備するために、生命保険に加入しておくことが考えられます。



個人で生命保険に入るということですか?



いえ、社長の場合ですと、法人契約の生命保険に加入すればよいでしょう。保険料を個人で支払うよりも、会社で支払うほうがいいですよね。



現在では、保険料を経費に入れることはできなくなったと聞きましたが、会社にメリットはあるのでしょうか。





長期平準定期保険であれば、保険料の一部を経費に入れることができる商品があります。ただし、解約返戻金の大きさによって経費に入る割合が決まっていますので、慎重に検討しなければいけません。



相続リスクの重要性は理解できましたが、私が事業承継して退職した後は、会社は保険料を支払ってくれないと思います。
そのときは解約することになりますか?





そうなりますね。解約返戻金を財源として、会社が社長へ退職金を支払えばよいでしょう。長期平準定期保険だと、解約返戻率は80%くらいです。一方で法人税の課税繰延べのメリットもありますから、トータルではお得になるはずですよ。



解約返戻率が100%を超える商品は無いのですか?



解約返戻率100%を求めるのであれば、終身保険になります。
ただし、課税の繰延べのメリットはありません。



私の相続や事業承継にどのように活用できるか、具体的に教えて頂けますでしょうか。



わかりました。次の動画で詳しく解説しましょう。
ご相談は公認会計士か税理士へ
事業承継支援の豊富な経験・専門性を有する公認会計士や税理士は、高齢化社会を背景に拡大する財産承継に係るお客様のさまざまなニーズにお応えするため、資産運用や生命保険だけでなく、相続や事業承継のアドバイスまで提供しております。
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