今回は、所得税額を直接減額することになる税額控除について学習します。所得税法では、二重課税を排除するための配当控除や、住宅取得を促進するための住宅ローン控除の仕組みがあります。これらは、課税所得金額に税率をかけて計算した所得税額から一定金額を控除できるものです。しっかりと理解しておきましょう。
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所得税額の計算
所得税を計算する方法には、総合課税と分離課税があります。それぞれ、課税所得金額に税率を掛けて所得税額を求めます。

税率は、「超過累進税率」と呼ばれ、課税所得の増加に応じて、高い税率を掛けて計算するものです。

たとえば、課税所得金額が700万円であったとしましょう。所得税額は、700万円に23%を掛けて、そこから控除額63万6千円を引いて計算される97万4千円となります。
7,000,000円×23% – 636,000円= 974,000円

税額控除
課税所得金額に税率をかけて計算した税額から、一定金額を控除することができる仕組みがあります。これを税額控除といいます。所得金額から一定金額を控除する所得控除と異なり、税額控除は、税額から直接控除するものです。

税額控除には、配当控除、住宅借入金等特別控除などがあります。

配当控除
配当控除とは、配当所得について総合課税を選択して確定申告を行った場合、課税所得金額に応じて定められた控除率を乗じた金額が、所得税額から控除されるものです。これは、法人税と所得税の二重課税を排除することを目的としています。

控除される金額は、課税総所得金額のうち、1千万円以下の部分に対して10%を、1千万円を超える部分に対して5%をかけたものです。この計算には、次の3パターンがあります。

第一に、課税総所得金額が1千万円以下の場合、配当所得に10%を掛けた金額が控除されることとなります。
第二に、その他の所得に配当所得を加えることによって課税所得金額が1千万円を超えることになる場合、課税所得金額1千万円を超えた部分は配当所得になりますが、その配当所得に対して5%、残りの配当所得に対して10%を掛けた金額を合計した金額が控除されることとなります。
第三に、その他の所得の合計だけで1千万円を超えている場合、課税所得金額から配当所得を控除した額が1,000万円超の場合、配当所得に対して5%を掛けた金額が控除されることとなります。

住宅借入金等特別控除
いわゆる住宅ローン控除と呼ばれる住宅借入金等特別控除は、居住用の住宅を取得して、一定の要件を満たす場合は、居住した年以後10年間にわたって、借入金の年末残高に一定の率をかけた金額が、所得税額から控除されるものです。これは、住宅取得を促進することを目的として設けられています。

住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。
まず、住宅取得者についての要件です。
要件として、住宅取得日から6か月以内に入居し、税額控除を受ける年の12月31日に引き続き居住していることが必要です。また、控除を受ける年の合計所得金額が3千万円以下であることが必要です。そして、親族から住宅を取得したわけではないこと、借入金によって住宅を取得したことが要件となります。

また、住宅についての要件があります。
要件として、合計所得金額が2千万円以下の人は、床面積が50㎡以上であること、合計所得金額が1千万円以下である人は、床面積が40㎡以上であることが必要です。中古住宅の場合は、一定の耐震基準を満たすか、一般の建築物で築20年以内、耐火建築物で築25年以内の経過年数基準を満たしていることが必要です。

さらに、借入金についての要件があります。
要件として、借入金の償還期間が10年以上であること、借入金が分割返済されるものであることが必要です。
住宅借入金等特別控除の控除額は、年末の借入金残高に一定の控除率をかけたものです。ただし、借入残高には、次の表のような限度額があります。新築の一般住宅の場合は、新築であれば2023年までは3千万円が上限となっています。中古であれば2千万円です。一方、認定優良住宅や低炭素住宅の場合は、新築であれば2023年までは5千万円、2024年以降は4千5百万円が上限となっています。中古であれば3千万円です。
控除率は0.7%で、控除期間は原則13年です。たとえば、年末の借入金残高が4千万円であった場合、4千万円に0.7%を掛けて計算された28万円が、13年間にわたって所得税から控除されます。

控除額をその年の所得税額から控除しきれなかった場合には、翌年分に繰り延べて、翌年の住民税から控除することができます。
なお、年末調整の対象となる給与所得者であっても、最初の年だけは、確定申告しなければなりません。

まとめ
今回は、配当所得と住宅ローン控除を中心として、税額控除について学習しました。所得控除は、税率をかける前の所得金額から控除されるものであるのに対して、税額控除は、税率をかけた後の所得税額から直接控除されるものです。これらを区別して、しっかりと理解しておきましょう。

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