今回は、所得控除について学習しましょう。14種類あります。適用対象となるものは何か、控除額の計算方法や上限額について覚えてしまいましょう。
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所得控除の手続
所得税の課税対象となるのは、合計所得金額から所得控除を行った後の「課税所得金額」です。

所得控除は、最低限の生活費の保障、租税負担能力の調整などを目的として、14種類が設けられており、物的控除と人的控除とに分けられます。
物的控除には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除および寄付金控除の7種類があり、人的控除には、障害者控除、寡婦控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除および基礎控除の7種類があります。


所得控除の計算は、先に総合課税の所得から控除し、控除しきれない残額があれば、分離課税の所得から控除します。
それでは、14種類の所得控除を順番に見ていきましょう。

各種所得控除
基礎控除
すべての納税者に対して、基礎控除が適用されます。
合計所得金額が2,400万円以下の方は48万円ですが、それを超えると32万円、16万円と引き下げられ、2,500万円を超える方は適用できません。

配偶者控除と配偶者特別控除
配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である場合に適用されます。対象となる配偶者は、納税者と生計が同一の配偶者で、合計所得金額が48万円以下の人です。所得48万円以下ということは、年間給与収入で103万円以下ということになります。
ただし、配偶者が青色事業専従者として給与の支払を受けているときは、控除の対象となりません。
控除額は、納税者本人の合計所得金額に応じて異なります。合計所得金額が900万円以下の場合、一般の配偶者は38万円、70歳以上の老人の配偶者は48万円が控除されます。900万円超1,000万円以下の場合、控除額はこれよりも減額されます。

一方、配偶者特別控除は、合計所得金額が48万円超133万円以下の配偶者に適用されます。年間給与収入で言えば、103万円超188万円以下の方です。
控除額は、納税者本人の所得と配偶者の所得に応じて異なります。
納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合、合計所得金額が48万円超95万円以下である配偶者は、最高38万円が控除されます。この控除額は、配偶者の合計所得金額が133万円になるまで、所得が増えるにつれて減少します。133万円超になると控除額はゼロとなります。

そして、納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下の場合、控除額は減額され、900万円超1,000万円以下になると、控除額はさらに減額されます。

扶養控除
控除の対象となる扶養親族とは、生計が同一の親族のうち、合計所得金額が48万円以下である、16歳以上の子どもや親をいいます。配偶者は除きます。
扶養控除は、納税者に、控除対象の扶養親族がいる場合に扶養控除が適用されます。扶養親族の中で、19歳以上23歳未満の人を特定扶養親族、70歳以上の人を老人扶養親族といいます。
控除額は、一般の扶養親族は38万円、特定扶養親族は63万円、老人扶養親族は48万円です。また、老人扶養親族のうち、納税者または配偶者の直系尊属で、同居している場合には、10万円が加算されて控除額は58万円となります。

雑損控除
災害や盗難といった予想外の損害・損失が発生した場合、雑損控除の適用を受けることができます。
納税者または生計同一の親族が持つ住宅や家具などの生活必需品が、災害、盗難または横領によって損失を受けた場合、または災害によって、やむを得ない支出が発生した場合、保険金や損害賠償金などで補填される部分を除いて、計算されます。
ここで、損害金額に災害関連支出額を加算し、保険金などで補てんされる金額を差し引いた金額のことを、差引損失額といいます。
差引損失額 =損害金額+災害関連支出額-保険金などにより補てんされる金額
控除額は、次のうち、いずれか大きいほうの金額です。すなわち、差引損失額から総所得金額の10%を差し引いた金額、災害関連支出額から5万円を差し引いた金額
① 控除額=差引損失額-総所得金額×10%
② 控除額=災害関連支出額-5万円
控除額は、①と②のいずれか大きい方

その年に控除しきれなかった雑損失の金額は、確定申告することによって、翌年以降3年間にわたって繰越控除することができます。これを「雑損失の繰越控除」といいます。

医療費控除
納税者が、本人または生計が同一の配偶者や親族のために一定額を超える医療費を支払った場合に、医療費控除の適用を受けることができます。
所得控除の対象となる医療費は、治療、回復を目的とする費用のみです。美容や疾病予防、健康増進のための費用は含まれません。
控除の対象となる医療費として、たとえば、次のようなものがあります。
医師、歯科医師による診療費または治療費、治療または療養に必要な医薬品の購入費、病院への交通費、指圧師、針灸師、柔道整復師などによる施術費、 入院費、出産費、介護保険制度で支払う施設・居住サービスの自己負担額、 治療などに必要な義手、義足、松葉杖、補聴器などの費用です。

これに対して、控除対象とならない医療費として、美容整形手術の費用、入院のときの身の回り品の購入費、ビタミン剤やサプリメントなどの疾病予防、健康増進のための健康食品の購入費があります。健康診断や人間ドックの費用も同様に控除対象となりませんが、診断の結果として重大な疾患が見つかった場合には控除対象となります。


医療費控除の計算では、医療保険でカバーされる部分の金額は控除しなければなりません。
控除額は、医療費の合計額が、総所得金額が200万円以上の場合は、10万円を超える部分の金額、総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%を超える部分の金額です。200万円が限度となっています。
なお、医療費控除との併用はできませんが、特例として、セルフメディケーション税制があります。

これは、医療用から転用された特定一般用医療品の購入で年間12,000円を超えた場合、確定申告によって、12,000円を超える部分の所得控除を受けることができるものです。上限は8万8千円です。

ただし、納税者本人が健康診断を受診するなど、健康増進のための取り組みを行っていることが条件です。
社会保険料控除
社会保険料とは、健康保険、国民健康保険、介護保険、国民年金、厚生年金保険、雇用保険などの保険料や、国民年金基金、厚生年金基金の掛金などをいいます。 納税者が、本人または生計が同一の配偶者や親族のために社会保険料を支払った場合、その全額が所得控除されます。

小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金とは、小規模企業共済の掛金、確定拠出年金の企業型年金加入者の掛金や、個人型年金加入者の掛金などをいいます。
納税者が、これらの掛金を支払った場合、その全額が所得控除されます。

生命保険料控除
納税者が、生命保険、介護医療保険および個人年金保険の保険料を支払った場合、生命保険料控除の適用を受けることができます。
保険料の区分ごとに、年間の支払保険料の合計額に応じて、控除額が決められています。
平成23年12月31日以前に締結された旧契約の場合、生命保険料控除は、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除の2つに区分され、それぞれの控除額の最高は5万円、合計の限度額は10万円でした。
一方、平成24年1月1日以降に締結された新契約の場合、生命保険料控除は、一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つに区分され、それぞれの控除額の最高は4万円、合計の限度額は12万円です。

このときの控除額は、年間支払い保険料に応じて、こちらの表のように計算が行われます。

地震保険料控除
納税者が、居住用家屋や生活用道産に対する地震保険の保険料を支払った場合、その全額の所得控除を受けることができます。ただし、限度額は5万円です。

寄附金控除
特定寄付金とは、国、地方公共団体、特定公益増進法人および認定NPO法人などに対する寄付金のことをいいます。
納税者が支払った特定寄付金の合計額が2,000円を超える場合、所得控除を受けることができます。
控除額は、支出した特定寄付金の合計額から2,000円を控除した金額で、上限額は総所得金額の40%です。
①支出した特定寄付金の合計額
②総所得金額等の40%相当額
控除額=①または②のうち低いほうの金額-2,000円

障害者控除
納税者または控除対象配偶者、扶養親族が、障害者または特別障害者である場合、所得控除を受けることができます。特別障害者とは、障害者のうち精神または身体に重度の障害のある人をいいます。
控除額は、一般障害者の場合27万円、特別障害者の場合40万円です。また、特別障害者が納税者と同居している場合は、控除額に35万円が加算され、75万円となります。

ひとり親控除・寡婦控除
配偶者と死別、離婚した人、未婚のひとり親となった人が、母子家庭または父子家庭として生計同一の子供を育てている場合、合計所得金額が500万円を超えていなければ、所得控除を受けることができます。
女性の控除額は、未婚・死別・離婚の場合、35万円です。また、死別・離婚で子どの以外の扶養親族がいる場合、控除額は27万円、死別で子どもがいない場合も控除額は27万円です。
これに対して、男性の場合は、子どもがいる場合にかぎり適用を受けることができ、控除額は、35万円です。

勤労学生控除
納税者が勤労学生である場合、所得控除を受けることができます。ただし、勤労による合計所得金額が75万円以下であり、かつ、勤労によらない不労所得が10万円以下である場合に限ります。
控除額は、27万円です。

まとめ
今回は、所得控除について学習しました。確定申告の実務では、配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除、医療費控除、生命保険控除を適用するケースが多く見られます。これらの適用範囲と控除額の計算や上限額を、しっかりと覚えておきましょう。

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