今回は、損益通算と純損失の繰越控除について学習します。損益通算は総合課税の所得について、黒字と赤字を相殺する手続きです。相殺する順番が決められていることに注意しましょう。損益通算した結果としてマイナスになったときは純損失が発生します。青色申告している場合、純損失は3年間の繰越控除ができます。この点もしっかりと学習しましょう。
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損益通算の仕組み
(1) 損益通算とは
10種類の所得に区分して各所得金額を計算したあとは、損益通算および純損失の繰越控除を行います。

所得の赤字は、他の所得の黒字から控除して、相殺することができます。これを損益通算といいます。この結果、課税対象となる所得金額を減らすことができます。
ただし、損益通算できるものと、できないものとがあります。

(2) 損益通算の対象となる損失
損益通算できるのは、不動産所得の損失、事業所得の損失、山林所得の損失、譲渡所得の損失だけです。
これら4つ以外の損失は、損益通算することはできません。利子所得と退職所得は、計算上損失が発生することはありません。また、雑所得と一時所得については、他の損失を雑所得と一時所得の黒字と相殺することは可能ですが、雑所得と一時所得に損失が生じても、他の所得の黒字と相殺することはできません。


(3) 損益通算の対象とならない損失
ただし、不動産所得の損失のうち、土地を取得するためにかかった負債の利子は、損益通算できません。

また、国外の中古建物に係わる不動産所得の損失のうち、減価償却費に相当する損失は生じなかったものとみなされます。
また、株式等の譲渡所得と土地・建物の譲渡所得については、譲渡益と譲渡損を互いに相殺することはできますが、その結果として損失が残っていた場合、他の所得と損益通算することはできません。

(4) 損益通算の順序
損益通算は、所得を次の3つの類型に分類して、第1次通算、第2次通算、第3次通算の順で行われます。

第一次通算は、経常所得グループと譲渡・一次所得グループです。経常所得グループは、利子所得、配当所得、給与所得、不動産所得、事業所得、雑所得です。これらで損益通算を行います。一方の譲渡・一時グループは、総合課税の譲渡所得と一時所得です。一時所得の金額は、50万円の特別控除後で2分の1を乗ずる前の金額です。

第1次通算の後、なお損失が残っていれば第2次通算を行います。第2次通算は、①経常所得グループの結果と②譲渡・一時グループの結果との間で損益通算を行います。

第3次通算は、第2次通算の後に残された損失と、退職所得、山林所得との損益通算です。退職所得の金額は、2分の1を乗じた後の金額です。

(5) 合計所得金額
損益通算した結果、一時所得と総合課税の長期譲渡所得に黒字が生じているとき、すべての合計所得金額を計算するときには、一時所得と総合課税の長期譲渡所得には2分の1を乗じて計算します。
(6) 上場株式等の配当所得と譲渡損失との損益通算
上場株式の配当所得や特定公社債の利子所得について、申告分離課税を選択した場合、上場株式や特定公社債の譲渡損失と損益通算することができます。
しかし、これらを損益通算した結果として損失が残った場合であっても、原則として、総合課税の所得と相殺することはできません。

純損失の繰越控除・繰戻還付
第3次損益まで損益通算しても、なお控除しきれない損失のことを純損失といいます。青色申告を行っている場合、純損失の繰越控除と繰戻還付を行うことができます。
純損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越し、所得から控除することができます。これを繰越控除といいます。

また、純損失を前年の所得に繰り戻して、前年の所得税の還付を請求することができます。これを繰戻し控除といいます。

まとめ
今回は、損益通算と純損失の繰越控除について学習しました。損益通算では、相殺する順序が、第一次通算、第2次通算、第3次通算と決められているため、それぞれどの所得を相殺するのか、忘れないようにしましょう。また、純損失の繰越控除、総合課税と分離課税の区別についても、しっかりと覚えておきましょう。

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