今回は、配当所得、利子所得、総合課税の譲渡所得について学習します。上場株式と非上場株式の区別、分離課税と総合課税を選択が可能となる配当所得が難しいかもしれません。所得から差し引く控除額、2分の1だけが総所得金額に合算され総合長期の譲渡所得に注意して学習しましょう。
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配当所得
(1) 配当所得とは
配当所得とは、株式の配当金、株式投資信託、ETF、REITなどの分配金をいいます。


(2) 配当所得の金額
配当所得は、収入金額そのものの金額となります。
ただし、株式などを借入金によって購入した場合、その年中に支払う借入金の利子を必要経費として収入金額から差し引くことができます。
(3) 配当所得の課税方法
配当所得は、上場株式の配当とそれ以外、すなわち非上場株式の配当金に分けることができます。

非上場株式の配当金の場合、原則として、総合課税となります。ただし、少額配当、すなわち配当金が年間10万円以下の場合、源泉徴収だけで完結させて、申告不要とすることができます。

一方、上場株式の配当金の場合、その課税方式は、源泉徴収だけで申告不要とすること、総合課税、申告分離課税、これら3種類から選択することができます。

いずれにしても、配当所得は、所得税等が15.315%、住民税5%を合わせた20.315%が源泉徴収されます。これら3つについて、一つずつ説明しましょう。
まず、源泉徴収だけで完結させて確定申告不要とすることができます。ただし、発行済株式総数の3%以上を有する大株主の人は、選択することができません。大株主は総合課税です。
また、申告分離課税も選択することができます。この場合、確定申告によって上場株式の譲渡損失と配当所得との損益通算が可能となります。損益通算を行った後に配当所得が残されるのであれば、分離課税となり、20.315%の所得税・住民税が課税されることになるのです。
そして、総合課税も選択することができます。総合課税の場合であっても、配当金の受取時には20.315%の源泉徴収が行われていますので、確定申告によって不足分や過払い分の精算が行われるのです。
総合課税であれば所得税が累進課税となるため、税負担が重くなると思われるかもしれません。しかし、総合課税の場合だけ、税額控除である配当控除を受けることができるメリットがあります。税額控除を行って結果的に税負担が軽くなるのであれば、総合課税を選択すべきということです。
利子所得
(1) 利子所得とは
利子所得とは、公社債の利子、預貯金の利子、公社債投資信託の分配金のことをいいます。

(2) 利子所得の金額
利子所得の金額は、収入金額となります。必要経費は認められていません。
(3) 利子所得の課税方法
利子所得は、原則として、15.315%の所得税等と5%の住民税が源泉徴収される源泉分離課税です。
ただし、公社債のうち、特定公社債、すなわち、国債、地方債、外国国債、公社債投資信託などの、利子所得は申告分離課税の対象とすることができます。

この場合、源泉徴収された後、確定申告することにより、上場株式に係る譲渡損失との損益通算が可能となります。
(4) 利子所得の非課税制度
障害者を保護するための制度として、預貯金の元本350万円までに係る利子が非課税となる「マル優」があります。また、公債350万円までに係る利子が非課税となる「特別マル優」があります。
土地・建物や株式以外の譲渡所得
土地や建物、株式を譲渡したときの譲渡所得は理解できていると思いますが、それら以外の資産を譲渡した場合は、総合課税となります。所有期間が5年以下であれば「総合短期」、5年を超えていれば「総合長期」として区分されます。
(1) 総合課税の短期譲渡所得の金額
総合短期の譲渡所得は、50万円の特別控除額を控除した金額が他の所得と総合して課税されます。

譲渡所得の金額=総収入金額一(取得費+譲渡費用)一特別控除額50万円
(2) 総合課税の長期譲渡所得の金額(総合長期)
これに対して、総合長期の譲渡所得は、50万円の特別控除額の残額を控除した金額に、2分の1を乗じた金額が、他の所得と総合して課税されます。

譲渡所得の金額=総収入金額一(取得費+譲渡費用)ー特別控除額 総所得金額に算入される金額 = 譲渡所得の金額 × 1/2
まとめ
今回は、配当所得、利子所得、総合課税の譲渡所得の計算方法について学習しました。上場株式の配当金に係わる申告不要制度、申告分離課税、総合課税の3つを選択できる配当所得が難しいかもしれません。具体的な計算は理解できなくても構いませんので、これら3つの計算方法だけは覚えておきましょう。
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