今回は相続時精算課税制度について解説いたします。
2022年現在、税制改革により相続時精算課税制への理解が重要となります。
特別控除額や、相続税額から贈与税額を控除する計算について理解しておきましょう。
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相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、相続税・贈与税の一体化するもので、相続財産と贈与財産を合算して計算した相続税から、生前に支払った贈与税を控除する制度です。
60歳以上の祖父母、お父様やお母様から、18歳以上の子どもや孫への贈与について、受贈者は、相続時精算課税制度によって贈与税を申告することを選択することができます。
この制度を選択すると、選択した贈与者ごとに2,500万円までの特別控除額が与えられます。
贈与回数、贈与財産の種類に関係なく、累計で2,500万円まで贈与税はかかりません。
累計で2,500万円を超える場合、超える部分について20%の税率で贈与税がかかります。
その後、この制度を選択した贈与者が死亡して相続が発生すると、生前の贈与財産も相続財産に合算して相続税額を計算しますが、そこから生前に支払った贈与税額を控除することで、過去の贈与分を精算するのです。
相続時精算課税制度は暦年課税制度と異なり、贈与者ごとに区分して計算します。
もし父母の両方からの贈与についてこの制度を選択すれば、それぞれ2,500万円、2人合わせて5,000万円の特別控除額を活用することができることになります。
ただし、いったん相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税制度に戻すことはできません。
適用対象者と適用対象財産

相続時精算課税の適用を受けるための、受贈者の要件は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること、贈与者の推定相続人である子または孫であることです。
一方、贈与者の要件は、贈与をした年の1月1日において60歳以上である父母または祖父母であることです。
適用対象となる贈与財産については、その種類や金額に制限はなく、贈与回数にも制限はありません。
ただし、贈与財産が住宅取得資金である場合には、特例として、贈与者が60歳以上であるという年齢の要件が無くなります。
贈与税の申告と納付

相続時精算課税を選択する場合は、受贈者は、これを適用したい最初の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書とともに「相続時精算課税選択届出書」を添付して、所轄の税務署に提出しなければいけません。
たとえば、初めて相続時精算課税制度を選択した年に、特定贈与者から贈与により取得した財産の価額の合計額が2,500万円以下であれば、その年の贈与税はかかりません。
そして、特別控除額2,500万円ののうち、その年に適用しなかった残額について、翌年以降に繰越すことができます。
翌年に特定贈与者から贈与により財産を取得した場合は、この繰越した特別控除額を適用することができます。
このようにして特別控除額を適用した結果、贈与財産の累計額が特別控除額2,500万円を超えた場合は、超えた部分に20%の税率を乗じた金額が贈与税額として課されます。
その後、贈与者に相続が発生すると、相続時精算課税制度を適用した財産の贈与時の価額と、相続財産の相続時の価額とを合算して相続税額を計算し、そこから生前に支払った贈与税額を控除した額が納付すべき相続税額として算出されることになります。
贈与税額のほうが相続税額よりも多い場合は、その差額が返金されます。
暦年課税制度との比較
最後に暦年課税制度と比較してみましょう。
贈与者の要件について、暦年課税制度は誰でも可能であるのに対して、相続時精算課税制度は60歳以上の祖父母または父母となっています。
受贈者の要件について、暦年課税制度は誰でも可能であるのに対して、相続時精算課税制度は18歳以上の子どもまたは孫となっています。
控除額について、暦年課税制度は基礎控除額110万円であるのに対して、相続時精算課税制度は特別控除額2,500万円となっています。
税率について、暦年課税制度は10%から最大55%の累進課税であるのに対して、相続時精算課税制度は20%となっています。
相続財産との関係について、暦年課税制度は相続開始前3年以内の贈与財産を加算するのに対して、相続時精算課税制度は全ての贈与財産を加算します。
その場合、既に支払った贈与税額を相続税額から控除する点は、これらで共通しています。
まとめ
今回は相続時精算課税制度について解説いたしました。
2022年現在、暦年課税制度が廃止され、相続時精算課税制度に一本化される方向で、税制改正が検討されています。
今後はこちらが重要となりますので、2,500万円の特別控除額、相続税額からの贈与税額を控除する計算について、しっかりと理解しておきましょう。
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