今回は、保険契約者を保護するために定められた保険募集人の義務や禁止行為について学習しましょう。
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保険業法における契約者保護に関する制度
保険業法では、保険契約者を保護し、保険募集人の公正な競争を維持するため、禁止行為が定められています。
重要事項の説明義務

一つは、保険募集人には、重要事項の説明義務があります。
これは、保険契約の重要な事項のうち、お客様が商品内容を理解するために必要な情報と、お客様に対して注意喚起すべき情報について、お客様に説明する義務のことをいいます。
商品内容とは、商品の仕組みや保障(補償)の内容、特約、保険期間、保険金額などです。
また、注意喚起情報とは、契約の申込みの撤回ができるクーリング・オフ、告知義務の内容や責任開始期、保険金が支払わない場合のうち主なもの、保険会社が破綻したときに保護されるセーフテイネットなどです。
特に、クーリング・オフが重要です。
クーリング・オフとは、契約申込みを行った日または申込み撤回について関する書面を交付された日のいずれか遅い日を含めて8日以内であれば、文書で伝えることで契約申込みを撤回することができるというものです。
これらを説明しないことや、虚偽の説明を行うことは、重大な違反となります。
不実告知を勧める行為の禁止
2つ目に、保険募集人には、不実告知を勧める行為が禁止されています。これは、職業や健康状態など保険契約を締結するうえで重要となる事項について、虚偽の告知を勧めてはいけないというものです。
もしこれに違反した場合、その保険募集人が所属する保険会社は、告知義務違反となり、契約を解除することはできなくなります。
告知を妨害する行為・告知しないことを勧める行為の禁止
3つ目に、保険募集人には、告知を妨害する行為や、告知しないことを勧める行為が禁止されています。
これは、保険契約の締結にあたり、病気などを告知させないように妨害したり、告知しないよう勧めたりすることです。
もしこれに違反した場合、その保険募集人が所属する保険会社は告知義務違反となり、契約を解除することはできなくなります。
不当な乗換募集や転換契約の禁止

4つ目に、保険募集人には、不当な乗換募集や転換契約が禁止されています。
生命保険の転換契約にはデメリットが伴うため、重要事項をしっかりと説明しなければなりません。
説明すべきものは、たとえば、配当の方式、保険種類の変更、保険金額の増減などです。
また、予定利率の変更によって保険料が上がる可能性があることや、契約転換以外にも保障の見直し制度があることなどです。
なお、転換の前後の契約内容が比較できるよう、所定の事項を記載した書面をお客様に交付し、口頭による説明を行わなければなりません。
特別利益の提供の禁止
5つ目に、保険募集人には、保険料の割引きや割戻し(後日返金)など、特別の利益を提供することが禁止されています。
お客様の保険料を立替払いすることも同様に禁止されています。
不当な比較表示の禁止
第6に、他社と自社の商品内容について、根拠の乏しい比較を行って誤解を招くことは禁止されています。
将来の金額が不確実な事項にかかる不当表示の禁止
第7に、保険募集人には、将来の金額が不確実なものについて、断定的な判断を示したり、確実だと誤解されるような説明を行ったりすることが禁止されています。
例えば、配当金や解約返戻金の金額や、変額保険の運用成績などです。
保険会社の特定関係者による特別利益の提供の禁止
第8に、保険会社と特別な関係にある会社が、特別なサービスなどの利益を提供することを約束して保険募集することが禁止されています。
保険契約者保護に欠けるおそれがある行為の禁止
そして、保険募集人には、保険契約者保護に欠けるおそれがある行為が禁止されています。
たとえば、お客様を威圧したり、業務上の地位を不当に利用して保険契約を申し込ませようとしたりする行為です。
金融商品販売法の重要事項説明義務

保険会社だけでなく、保険募集人、保険仲立人も金融商品販売業者に含まれるため、金融商品販売法の規制の対象となります。
金融商品販売法では、金融商品販売業者が説明しなければならない重要事項を明確にし、それらを説明せずにお客様に損害を与えた場合の損害賠償責任を定めています。
消費者契約法
消費者契約法では、消費者と事業者との間で交わされる契約を対象として、事業者の不適切な勧誘方法によって、誤認または困惑して締結した契約について、消費者が契約を取消すことを認めています。
まとめ
今回は、保険業法を中心として保険募集人の義務について学習しました。いずれも実務の現場で忘れてはいけない重要な義務です。
ここで取り上げた義務だけでも、しっかりと理解しておきましょう。
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