自営業者の年金を補充するものとして、国民年金基金と小規模企業共済があります。
今回は、国民年金基金と小規模企業共済について学習しましょう。
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自営業者のための国民年金基金~年金の不足を補填する~

自営業者、すなわち国民年金の第1号被保険者は、年金が老齢基礎年金だけであり、老齢厚生年金が無いため、受給額が少なくなります。
そこで、老齢基礎年金を補充するための年金として、この国民年金基金の制度が設けられました。
加入した口数によって年金額が決まる仕組み

国民年金基金への加入は口数制となっており、何口加入するかにより年金額が確定します。
この際、1口目は2種類の終身年金、2口目以降は、2種類の終身年金または5種類の確定年金から加入者が自由に選択します。
国民年金基金の掛金は、月額6万8000円(年額816,000円)が上限となっています。
なお、国民年金基金の加入員が、個人型の確定拠出年金に加入していた場合は、その掛金と合算して月額6万8000円(年額816,000円)が上限となります。
国民年金基金の2つの給付内容
国民年金基金の給付は、老齢年金と遺族一時金の2種類です。
老齢年金を一時金として受け取ることはできません。
ただし、老齢年金の給付額は確定しているため、積立金の運用成績によって変動するようなことはありません。
国民年金基金の掛金は、その全額が社会保険料控除として所得控除の対象となり、受給する老齢年金は、雑所得となります。
自営業者のための小規模企業共済~退職金の役割~

小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主や会社役員が、廃業や退職した後の生活資金などをあらかじめ準備するために設けられた共済制度です。
これは、個人事業主や会社役員にとっての退纖金の役割を果たしています。
掛金を積み立てて、廃業・死亡・老齢あるいは退任した場合に、掛金の払込月数に応じて共済金を受け取る制度です。
加入者の対象となるのは役員や経営者のみ

加入できるのは、常時使用する従業員数が20人以下、商業とサービス業では5人以下の個人事業主、会社役員および共同経営者です。
よって従業員は、加入することができません。
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から7万円までで500円刻みで選択することができますが、加入者は、預金口座振替によって納付します。
税制上の優遇処置~所得控除の対象になる!~
小規模企業共済制度には、税制上の優遇措置があります。
小規模企業共済の掛金は、その全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。
また、共済金を年金として受け取る場合は雑所得となり、一時金として受け取る場合は退職所得となります。
中小企業退職金共済~中小企業のための退職金制度~
中小企業退職金共済は「中退共」と呼ばれ、中小企業のための退職金制度となっています。
これに加入することができる企業は、中小企業者ですが、加入条件は業種によって異なります。
中退共に加入できる企業の基準について

中退共に加入できる企業は、法人であれば、常時雇用する従業員数または資本金のいずれかが業種に応じて定められた基準に該当する企業です。
一方、個人であれば、常時雇用する従業員数によります。
加入企業が規模拡大して中小企業者ではなくなった場合、中退共の解約手当金相当額を、企業型の確定拠出年金に移換することができます。
事業主に雇用される従業員は、原則として全員加入することになっており、事業主の配偶者や生計同一の同居親族でも、雇われていれば中退共に加入することができます。
中退共の掛け金はすべて事業主が負担~損金/経費としてOK~

中退共の掛金は、事業主が全額負担します。
法人の場合、この掛金の全額を損金算入することができ、個人事業主の場合、全額を必要経費にすることができます。
掛金月額は、5,000円から3万円まで16種類の金額から選択できるようになっておいます。
中退共の細かな仕組み~国からの助成金や退職について~

中退共に新たに加入する事業主や、掛金月額を増額する事業主には、掛金の一部につき国からの助成があります。
たとえば、中退共に新たに加入する事業主は、加入後4か月目から1年間にわたり、国から掛金月額の2分の1相当額の助成を受けることができます。
中退共の加入企業の従業員が退職し、その後に中退共の加入企業に転職した場合は、前後の退職金共済契約に係る掛金納付月数を通算することができます。
従業員が退職した場合、中退共から従業員へ直接に退職金が支払われます。
また、一定の条件を満たせば、「全額分割払い」「一部分割払い(併用払い)」も選択することが可能になります。
まとめ
今回は、国の退職金制度について学習しました。事業主の退職金制度である小規模企業共済と、中小企業の従業員の退職金制度である中小企業退職金共済です。
実務上も取り扱うことが多いことから、ここでしっかりと理解しておきましょう。
以上
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