一家の生計を支えていた人が死亡し、子どものいる妻や子どもが残された場合、その後の生活費をどのようにしてまかなえばよいでしょうか。
わが国には、子供のいる妻の生活を保障するための遺族年金の制度があります。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金がありますが、今回は、遺族厚生年金について学習しましょう。
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遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合に、一定の遺族に支給される年金です。
遺族厚生年金の受給要件は次のとおりです。
- 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
- 厚生年金保険の被保険者期間中に初診日のある傷病で、初診日から5年以内に死亡したとき
- 1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている人が死亡したとき
遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した人と同一生計にある遺族です。
その遺族の順位は、配偶者、年金法上の子供、父母、孫となっています。
妻には、事実上の婚姻関係にある、いわゆる内縁の妻も含まれます。
妻や子どもは年齢に関係なく支給対象となりますが、遺族が夫や父母である場合は、妻が死亡した時点で夫や父母が55歳以上でなければ支給対象になりません。
55歳以上であれば、60歳から支給されます。

遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3とされています。
亡くなるまでの厚生年金の加入期間や、報酬額にもとづいて計算されるわけですね。
なお、65歳以後の遺族に支給される年金については、まず遺族自身の老齢厚生年金が全額支給されます。
さらに、その金額と下記のいずれか多い方との差額が、遺族厚生年金として支給されます。
- 遺族厚生年金
- 自分の老齢厚生年金 ✕ 1/2 + 遺族厚生年金 ✕ 2/3
なお、子のない30歳未満の妻の遺族厚生年金は、5年間の有期年金となります。
寡婦加算
中高齢寡婦加算
寡婦年金は、夫が年金給付を受けることなく死亡した場合に、遺族である妻に支給される年金です。
夫の保険料が掛捨てになってしまうことを防止するための仕組みですね。
しかし、夫の死亡時、子のない妻は遺族基礎年金が支給されません。
また、子どもがいる妻であっても、子供が18歳に達すると、遺族基礎年金の支給は打ち切られます。
そこで、その救済策として、一定の要件を満たす妻には、寡婦加算として、年金が上乗せ支給されることになります。
これは、国民年金独自の給付ですが、国民年金の第1号被保険者である夫が死亡し、次の要件をすべて満たす場合に妻に支給されることになります。
- 第1号被保険者として保険料納付済期間が10年以上ある夫が死亡したこと。
- 死亡した夫が老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けていないこと。
- 夫の死亡時、夫によって生計を維持されていること。
- 夫との婚姻期間が10年以上あって、40歳以上65歳未満の妻であること。
遺族年金を受給している妻も、子が高校を卒業する18歳になれば「子どものいる妻」ではなくなるので、遺族基礎年金は打ち切られてしまいます。
そこで、妻が40歳以上65歳未満である間で、遺族基礎年金を受けられない期間、遺族厚生年金に対して中高齢寡婦加算額が支給されます。
中高齢寡婦加算の金額は、遺族基礎年金の4分の3であり、約58万円です。
経過的寡婦加算
妻が65歳に達すると、妻の老齢基礎年金の支給が開始されることから、中高齢寡婦加算は打ち切らます。
しかし、昭和31年すなわち1956年4月1日以前に生まれた妻は、老齢基礎年金が少額である場合が多いです。
そのため、年金水準を維持するために、65歳以後も中高齢寡婦加算に代えて、経過的寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。
経過的寡婦加算の金額は、約2万円から58万円です。
まとめ
今回は、遺族厚生年金について学習しました。
中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算の関係について、しっかりと理解しておきましょう。
以上
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