会社員の医療保険には、療養給付だけでなく、高額療養費や傷病手当金、出産一時金、出産育児一時金があります。
今回は、療養給付以外の様々な保険給付の内容について学習しましょう。
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健康保険の多様な仕組み

①高額療養費~自己負担が高額な場合にサポート~
自己負担額が原則3割であっても、大きな病気などで患者の負担が高額になることがあります。
高額療養費は、自己負担が高額になったときに、患者の負担の軽減を図ることを目的としたものです。
ただし、下記のケースでは高額療養費の対象とはならないので注意しましょう。
- 入院時の食事代
- 個室に入院した場合の差額ベッド代
- 健康保険の対象外のもの(先進医療の技術代など)
被保険者またはその家族が、同じ月・同じ病院で支払った自己負担の金額が一定の限度額を超えた場合に、その超えた額が支給されます。
その限度額は、被保険者等の所得の大きさに応じて下記のように定められています。
高額療養費に係る月ごとの自己負担限度額
(70歳未満)
所得区分
(標準報酬月額)
自己負担の限度額
(1ヵ月あたり)
83万円~
25万2,600円+
(医療費ー84万2,000円)✕0.01
53~79万円
16万7,400円+
(医療費ー55万8,000円)✕0.01
28~53万円
8万100円+
(医療費ー26万7,000円)✕0.01
~28万円
5万7,600円
低所得者
(住民税が非課税)
3万5,400円
②出産手当金~出産休暇の収入補償~
出産手当金は、被保険者本人が出産にあたって会社を休み、給料が支給されない場合に、その休業期間の収入を保障するものです。
妻本人が健康保険の加入者である必要があるため、被保険者の扶養にある妻が出産した場合には対象とはならない点に注意しましょう。
出産手当金の支給期間
給付期間は、出産予定日以前42日から、出産日の翌日以後56日までです。
出産予定日よりも遅れて出産した場合も、その期間を含めた日数分の給付を受け取ることができます。
出産手当金の支給金額
休業1日につき標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。
標準報酬日額は、直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1として計算します。
給与の支払いを受けた場合でも、その金額が出産手当金の額よりも少なければ、差額が出産手当金として支給されます。
また出産手当金を受給している間に病気などで傷病手当金の対象となった場合、より金額の大きい方が支給されます。
1日あたりの支給障額
=
支給開始日より過去12ヶ月間の標準報酬月額の合計金額
÷ 12(…………12ヵ月間の平均額)
÷ 30(…………1日あたりの金額)
✕ 2/3
③傷病手当金
傷病手当金とは、病気やけがで会社を休み、給料が支給されない場合に、収入を保障するものです。
任意継続被保険者には支給されません。
連続して3日間休み、給与の支払いを受けられない場合に、休業4日目から休業1日につき、標準報酬日額の3分の2が支給されます。
ここで休業4日目から支給されるというのは、支給されない待期期間が必ず連続で3日間必要という意味です。
標準報酬日額は、直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1として計算します。
また給与の支払を受けた場合でも、その金額が傷病手当金の額よりも少なければ、差額が傷病手当金として支給されます。
傷病手当金の給付を受ける条件
- 病気やケガで働けずに休んだ場合
- 休んだ日が連続して3日間あること
- 賃金、給料が受けられない
- 賃金、給料が減少してしまう
傷病手当金の支給金額
=
支給開始日より過去12ヶ月間の標準報酬月額の合計金額
÷ 12(…………12ヵ月間の平均額)
÷ 30(…………1日あたりの金額)
✕ 2/3
傷病手当金の受給期間
最長で支給開始日から1年6か月まで
④出産育児一時金(家族出産育児一時金)
出産は病気ではないため、原則として医療保険の適用はなく、定期健診の費用や出産費用、入院費などは全額自己負担となります。
このような、出産や出産前後に発生する費用の負担を軽減させるために、妊娠4ヶ月(85日)以上で被保険者本人が出産した場合は出産育児一時金が支給されます。
被保険者の妻が出産した場合も同様に、家族出産育児一時金が支給されます。
支給額は、1児につき42万円、双子の場合は84万円です。
一時金の支給申請や受取りについては、医療機関が直接行う「直接支払制度」が設けられています。
その場合、一時金は医療機関に直接支払われるので、出産時の自己負担額は出産費用等が支給額を超過した場合の不足額だけとなります。
⑤埋葬料
被保険者が死亡した場合は、埋葬を行う家族に、埋葬料として5万円が支給されます。
家族が死亡した場合は、被保険者に、家族埋葬料として5万円が支給されます。
まとめ
今回は、高額療養費や傷病手当金、出産一時金、出産育児一時金について学習しました。
特に、高額療養費が重要です。
重い病気になったときでも、わが国には高額療養費の制度があるため、医療費を支払うことができなくなるのではないか、民間の医療保険が不可欠になるのはないかと心配する必要はありません。
自己負担の限度額がいくらになるか、大まかな金額をイメージできるようにしょう。
以上
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